暁の魔術師〜第1話〜


目がさめると、枕もとにお父さんから貰ったメダルが置いてあった。

"少しの間だけ、貸してもらえるか?"
そう、カルディス様に言われて、預けておいたんだけど・・・・

森でモンスターの大群に襲われて、
助けようとしたカルディス様(そのときはそんなに偉い人だと知らなかったけど)に、
逆に助けてもらって・・・・

残っていたモンスターたちは、
駆けつけてくれた、お師匠様たちと、騎士団に倒された。

安心したと思ったら、姿を消したもんスターに襲われそうになって、

そして・・・・・・

お師匠様が、殺されそうになった・・・・・

私を助けるために・・・・・

私はただ、泣き叫ぶ事しかできなかった。
身体中に傷を負って、倒れそうになるお師匠様を見つめながら。

気がつくと、モンスターは炎に巻かれて燃え尽きて、
傷だらけのお師匠様だけが倒れていた。

駆けつけたセリスさんが、顔を真っ青にしてまで魔法をかけつづけてくれて、
お師匠様の命は助かったけど・・・・

"あれ?そういえば、お師匠様はどこ?"
部屋を見回しても、この部屋にいるのは私一人。

お師匠様は、そのまま王宮へと運ばれて、
私はその看病をしていたんだけど・・・・・

"私が寝ちゃった間に、お師匠様、目がさめたのかな?"

お師匠様の傷は、完全には消えていないはず・・・・
ちょっと心配になって、私は、お師匠様を探しに行こうと思った。

窓の外には、満月が浮かんでいた。

月明かりだけを頼りに、関連のありそうな書物を引っ張り出してきて机に並べた。
さすがに月明かりでは、暗すぎたので、呪文を唱え、光源を生み出す。

まぶしいくらいの魔法の光に照らされ、
誰もいない図書館の机や椅子、本棚が浮かび上がる。

光が十分な事を確認すると、
机に並べたものに、視線を落とす。

その中には、さっき師匠に見せられた、ルーシアのメダルに似たものが置かれていた。

形はほぼ、ウォーターリビエラと同じ・・・・

実際、その隣に置いた、俺が普段使っているリビエラと、
暗闇の中では、見分けがつかない。

"だが、こうして、明かりの下だと、違いがわかる・・・・
 形はほぼ同じでも、使われている宝石は、全く別のものだな”

それだけ見て取ると、俺は古代文字の解読をはじめた。

"これが何か・・・・それを教えてくれるものが、ココに書いてあるはず・・・"

解読しようとしているのは、
俺自身がディグバンカーの奥から、書き写してきたメモ。
竜封印の儀式を施された部屋の壁面いっぱいに描かれていた文字だ。

そして、この不思議なメダルも、その部屋から持ち帰ったものだった・・・・

"どこにいるんだろ・・・・お師匠様"

あてもなく廊下を歩きながら、ふと、窓の外を見ると、
朝焼けに染まる町が見下ろせた。

"綺麗・・・・"

「どうしたの?ルーシアちゃん」
突然の女性の声に振り向くと、そこには、いつの間にかセリスさんが立っていた。

「よく眠れた?」
微笑みながら言う彼女に、私は顔が赤くなるのが分かった。
看病をするといって、寝ちゃった事がばれてると思うと・・・

「あ・・・その・・・・ぐっすり・・・・・」
私が、どういったらいいのかわからず、そう答えると、
セリスさんは、くすくすと笑った。

「私も、ぐっすり寝たから。
 これからレイクの傷治しに行くけど、まだ寝てた?」

魔力を使い果たしたセリスさんは、
寝て起きたら、お師匠様の傷を治してくれるって言ってたんだっけ・・・

「私が目を覚ましたときには、お師匠様起きたあとだったみたいで。
 今探してるんですけど・・・・・・」

セリスさんは、ムゥッと顔をしかめると、
「あいつったら、私が傷を治すまで、寝ているくらい出来ないの?
 いいわ、私も一緒に探してあげる」

そう言って、セリスさんは、歩き出す。
私はそのあとを、遅れないようについていった。