夢見る少女 C


(おい、聞いたか?)

チャンプスミルが飛び掛かる。

それを、下から遠心力を加えた一撃の下、切り裂く。

(ああ、クライファード様のことだろ。・・・・・・夫婦揃って殺されたらしいな)

横からやってきた。

体をかわすと同時に、振り上げた剣で切りかかる。

(また、ルケシオンのアイツだ)

正面から二匹。

一匹目を避けて、二匹目を切り裂く。

(クライファード様には一人娘がいたよな。・・・・・・可哀想に)

チャンプシミルは、その鋭い前足で地面を切り裂き急停止すると、再び襲い掛かってきた。

それを、一刀の元切り裂く。

(娘さんは殺されてないのか?)

両横から襲い掛かってくる。

後ろに避けると、互いにぶつかり合い、気絶している所に止めを刺す。

(ああ。ヤツは無駄な殺しはしないらしい)

目の前に迫ってきていた。

剣を正面に構える。剣は、的確に相手の喉を切り裂いていた。

(もう、この国も終わりかもな・・・・・・)



リエル(・・・・・・ラストッ!)

ザシュッ!!

最後の一匹が倒れる。

リエルの周りには、チャンプスミルの死体の山が出来上がっていた。

リエル「・・・・・・ふぅ」

大きく溜め息をつき、ナシスの方を振り返る。

その時目に飛び込んできた光景が、リエルを焦らせた。

リエル「おいッ! 危ないぞ! 逃げろッ!」

全部倒したつもりだったが、数匹のチャンプスミルがナシスのいる木陰付近にいた。

あの距離で気づかないはずはないのに、ナシスの視線は本から離れない。

並みの聖職者があの数に襲われたらひとたまりもないだろう。

リエル「おいッ!! 早く逃げろッ!!」

ナシス「・・・・・・?」

顔を上げ、笑顔で首をかしげるナシス。

リエル(・・・・・・なんなんだ、アイツはッ)

チャンプスミル目掛けて一直線に走る。

リエル「はああっ!!」



殲滅はすぐに終わった。

だが、何かおかしかった。

ナシスもそうだが、チャンプスミル達にもナシスを襲う気配は感じられなかった。

ナシス「お見事です」

リエル「・・・・・・何故だ? 何故、コイツらはお前を襲わないんだ・・・・・・?」

ナシス「うーん、どうしてでしょうね」

ナシスは本を閉じ、ローブの埃を払いながら立ち上がった。

ナシス「要はアレです。私も彼ら(チャンプスミル)も無駄な争いはしたくない。きっとそういう事です」

・・・・・・わけがわからなかった。相手はモンスター。話の通じる相手ではない。

リエル「ふん、まぁいい。先を急ぐぞ」

剣を納めると早足で歩き出すリエル。

ナシス「リエル。こっちですよ」

ナシスは微笑みながら、逆方向を指差していた。