夢見る少女 B ナシス「ほんとに要らないんですか? リカバリ」 リエル「しつこい! 要らんと言ったら要らんっ」 二人は平原を歩いていた。 スタスタと早足で歩くリエルの後をナシスが追う。 旅立ってからの数日間、モンスターとの遭遇も何度かあったが、 ナシスには回復、補助魔法の類は一切使わせなかった。 ナシス「しかし、お強いですね。 今のルアスが平和なのも、あなたの力が大きいと聞きましたが、納得しました」 リエルが突然、足を止めた。 リエル「・・・・・・ルアス王から、どこまで聞いている?」 ナシス「どこまで、とは?」 リエル「今回の任務は、わたしにとって特別なものだ」 ナシス「クライファード司祭のことですね。娘さんだと知ったときは驚きました」 リエル「父と母を知っているのか?」 ナシス「ええ。我々、聖職者の間では有名人ですよ。 夫婦揃って、司祭というのも珍しいですし。 もっとも、私はまだ幼かったので直接は知りませんけどね」 リエル「そうか・・・・・・」 ナシス「復讐・・・・・・ですか」 リエル「あぁ、そうだ。わたしはそれだけのために、今まで戦ってきた。 ・・・・・・本当はルアスの平和なんてどうだっていい。 父と母の仇を討ちたい。・・・・・・それだけだ」 ナシスからいつもの笑顔が消えていた。 ナシス「・・・・・・」 リエル「失望したか?」 リエルが自嘲するかのように言った。 ナシス「いえ、ただ・・・・・・」 ナシス「そんなあなたを見て、天国の父上と母上はどうお考えになるでしょうか?」 キッとナシスを睨み付けるリエル。 ナシス「・・・・・・失礼しました。おせっかいでしたね」 リエル「わかってもらおうとは思わない。・・・・・・ただ、邪魔だけはするな」 ナシス「・・・・・・どうしました?」 リエルの表情は、険しいままだった。 リエル「お喋りはここまでだ」 ・・・・・・チャンプスミルの群れだ。 性格はかなり攻撃的。 まだ、こちらには気づいていないようだが、リエルには先手必勝の文字が頭に浮かんでいた。 リエル「・・・・お前はいつものように、下がっていろ」 ナシス「はい、そうさせていただきます。えーと、どこがいいかな・・・・・・」 ナシス「よっこらしょっと」 ナシスは適当な木陰を見つけ、腰をおろした。手には本。 旅立ってからの数日間、二人の戦い方はこのスタイルだった。 ナシスの役割はまさに道案内のみ。 リエル「・・・・・・」 剣を抜き、助走をつけ、体重を乗せる。 リエル「たああああっ!」 ザシュッ!! ズバッ!! 縦に斬りつけ、返す刃を横に薙ぐ。 その巨体は一撃で倒れた。 だが、これは戦いの狼煙にすぎない。 「・・・・・・グルゥ」 チャンプスミル達の目が怪しく光っていた。