夢見る少女 @ とうとう、この日が来た。 この日のために、全てを捨てて、剣を取った。 あの男を殺すため、ウデを磨き、戦ってきた。 リエル(・・・・・・もうすぐだよ・・・・・・お父さん、お母さん・・・・・・) リエルは王宮の廊下を歩いていた。 すれ違う人間がリエルに向かって一礼する。 ルアス王の命令では、出発は明日との事だったが・・・・・・ たかぶる気持ちを抑えられそうにはなかった。 聖職者「あのぉ、・・・・・・すみません」 神妙な表情で歩くリエルに、申し訳なさそうに男が話し掛けてきた。 リエルと同い年くらいだろうか。 身なりからして聖職者だろう。 王宮では見かけない顔だった。 聖職者「ルアス王の間は、どちらへ行ったらいいでしょうか?」 リエル「・・・・・・この廊下をまっすぐ行って、突き当たりを左だ」 聖職者「そうですか。どうも、ありがとうございます」 男はニコニコと笑顔で去っていった。 王宮の人間でもなさそうなのに、王に何の用だろうか。 ふと、そんなことが頭をかすめる。 たが、長年の目標を目の前にしたリエルにとってはどうでもいいことだった。 次の日の朝。 リエルは旅支度をするため、ルアス城下町へと出た。 広場には露店が並び、活気に溢れている。 10年前、内乱状態だったころの面影は微塵にも感じられない。 リエルが品物を選んでいると、親子と思われる二人の会話が聞こえてきた。 娘「ねえ、ねえ、ママッ。わたし、アレほしーっ」 娘はバギバックパックを指差していた。 母「ふふふ。まだあなたには早いわよ。そんなに物を持ってどこに行く気なのかしら」 クスッと笑う母親。娘は母の服を引っ張り、目を輝かせていた。 娘「だって、だって、かわいーんだもん。買ってよぉ」 母「はいはい、帰ってパパと相談してからね。ほらっ、薬屋いくわよ」 娘「・・・・・・はーい」 手を繋ぎ、薬屋へ向かう親子。 リエルは選んでいた品物を手に持ったまま、親子の様子を見つめていた。 リエル(・・・・・・わたしにもあんな頃があっただろうか・・・・・・もう、覚えてないな) 必要なものを一通り買い揃えると、広場を後にした。 向かうべき場所はただ一つ。 ルケシオン。 やるべきことはただ一つ。 復讐。 これは「復讐の旅」