V 宿屋に戻ったエルヴィスたちは、もう既に寝てしまったカーウェンをベッドに運び レットが帰宅するのを待った。 「次はどんなクエストかな?」 フィスティナがエルヴィスに問いかける。 「そうだな・・・王宮周りのゴミ拾いかもよ」 近くにあるロウソクで煙草の火を点けながらエルヴィスが冗談を珍しく言う。 「そんな事もあったね」 フィスティナが吹き出す。 金になるクエストなど中々ある訳でもなく、したくもない仕事を引き受ける事も多々ある。 いくら剣技がたつエルヴィスたちとて、仕事に困る事もある。 エルヴィスにとって、王宮周りのゴミ拾いは最も恥かしい出来事の一つでもあった。 「私はそういう平和的な仕事嫌いじゃないけどね」 エルヴィスがフィスティナに笑みを浮かべる。 「フィズらしいな、だけどそんな仕事ばかりだと俺の腕が鈍っちまうよ」 エルヴィスは、勘弁とばかりに苦笑する。 「残念だけど今回はゴミ拾いじゃねぇぜ」 はっとエルヴィスとフィスティナが後ろを振り向くと、いつの間にかレットが ドアに止しかかっていた。 「いつから話を聞いてたんだ?」 エルヴィスが相変わらず苦笑しながらレットに問いかける。 「ゴミ拾いあたりかな、このまま行けばラブシーンの一つでも見れるとも思ったけどな」 レットはヒヒ、と茶化した笑みを浮かべる。 「相変わらず趣味が悪いんだから・・・」 フィスティナは軽くレットを睨みつける。 「まあまあ、お邪魔した事は謝ります、謝ります。俺が寝静まった後でも楽しんでくれよ」 フィスティナは顔を赤くし、プイっとソッポを向くだけだった。 「それでどんな情報を仕入れて来たんだ?」 エルヴィスも多少フィスティナに気まずい思いをしながらそれを誤魔化す様に 冷静を装ってレットに問いかけた。 「カプリコ砦の聖地の話は知ってるよな?そこの調査だよ」 カプリコとは、ノカンと同じく人間と同じように知性を持つ者もいる知能が高いモンスターである。 人間と取引をする事や、時には友人となる者もいる。 モンスター同士にも争いはあり、その中でもノカンとカプリコ過去から 激しい争いを繰り広げてきた。 共にお互いを忌み嫌い、蔑み、そして殺しあってきた。 元を正せばお互いの主食であるディドの生息地である平地の 縄張り争いから始まったらしい。 「しかし、つい先日その場所へ傭兵部隊が出たばかりだろ?」 エルヴィスが不可思議そうにレットに問いかける。 傭兵部隊とは、金でルアスに雇われている戦士たちの集まりである。 その中で腕がたつ者は、騎士になる者もいるので戦士たちの登竜門と言っても過言ではない。 しばし、レットは口を開こうとしなかったが、先ほど散々焦らされた自分を 思い出し苦笑しながら口を開いた。 「・・・・全滅したんだよ」
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