Ancient memory 第九部 U


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ルアスの騎士兵はジェイスの話だと約400人。
全員来るわけではないだろうが、400人もの大移動となればミルレスにつくまで4日ほど。
ルアスからルケシオンまで流れるウワサが2日3日だとすれば、もう時間は無いだろう。

「それじゃ、もう行かないと間に合わないかもしれないし行ってくるわね」
「どうしたガイ。そのクマ」
「・・・・・・なんでもない・・・」

ガイの目の下にはクマできていた。
実は昨夜の修練のとき、爆発を起こして近所の住民に怒られていたのだ。
そのまま明け方まで説教を喰らっていたという話である。

「ふーん、まぁいいか。とりあえずその『ディグバンカー』ってとこ目指せばいいんだな?」
「そうだ。中はノカン要塞になっていて侵入者をタコ殴りにしちまうらしいから気を付けろよ」
「そういやなんでそんなこと知ってるんスか?」
「そりゃ昔からここらへん遊びまわってりゃルアス調査団より詳しくなるってんだよ」
「のーちゃんよくノカンとケンカしてたねぇ」

ノーディが頭を掻きながら懐かしいなぁと笑う。
ユウも笑っていたし、
勿論一番ノカンを攻撃していたと思われるマモも懐かしそうに口の端を吊り上げていた。




「ノカン村を通って一番奥のディグバンカーに入る、って話だったわね」
「なーんかほのぼのしてたんだけどなぁ・・・」
「こりゃないッスよねぇ・・・」

村に入り、襲ってくるノカンを適当に捌いてテントが多く張られている地域に入った。

そこもさっさと通ろうとしたのだが、
テントの中のノカンに気づかれたセルシアたちはすぐに囲まれてしまった。

ヨーヨーを振り回し舌を出して挑発してくるノカン。
棍棒を持ち、垂れ目で汚い笑みを向けてくるノカン。
大きな足で蹴り技を繰り出してくるノカン。
人間一人分はあるだろうかというほどの丸太を抱え、力技で押してくる巨大なノカン。

「寧ろ色とりどりって感じね」
「意外と姉さん呑気ッスね」
「それはあなたが頑張ってくれるからよ」
「・・・さり気なく強制してないッスか?」

棍棒を持った紫色のノカンがしびれを切らして襲い掛かってきたのを始まりに、
他のノカンたちが一斉に向かってきた。

最初のノカンをセルシアが顔面を蹴りとばした。
次々に襲い掛かってくるノカンにも鼻に拳を入れたりして気絶させていく。

ジェイスは巨大ノカンから奪った丸太を振り回し、近寄らせないようにしているが滅茶苦茶な戦い方だ。

「えーと・・・あんまり痛くないから我慢ッスよ・・・フローズンシャワー!」

真ん中で悩んでいたラスアが思いついたように魔法を決める。
かつてスピロウたちにファイアストームを放ったときのように空を指差し、魔力を放った。
白い、いや銀にも見える幾多の雪と冷気がノカンたちの間を駆け抜ける。

ノカン特有の長い耳が翻るほどの強風で冷やされたノカンたちは目を血走らせたまま動かなくなった。

それでも冷気はまだ止まず、
地面が凍りつきそうになった頃にはノカン全員が氷の中に閉じ込められていた。

「それにしてもグロテスク。芸術性が無いわね」
「そんな言ってる場合じゃないだろ」

しかし氷の中に閉じ込められたノカンは歯茎まで口を開き、
目は血走りカッと開かれ随分とマッドな表情で凍り付いていた。

「ま、そのうち溶けるから大丈夫ッスよん」
「さっさと行こうぜ。このヨーヨー意外と痛ぇんだから・・・」

ジェイスが持っていたのはノカンのヨーヨー、青と白の模様で作られた子供の玩具だ。
そして残り少ないノカンたちを蹴散らし、奥に進み3人は地下へと続く巨大な階段を見つけた。

「さすが要塞、入る前から声が聞こえるぜ・・・」
「こっからは戦争ッスね」
「久しぶりのダンジョンだし、受けてたとうじゃないのノカン帝国」
「おっ、姉さんカッコイイ!」



Hunting result
『ノカンヨーヨー』