Ancient memory 第六部 V


V

ネクロケスタを倒してから数時間が経ち、空も明るくなっているだろうが森の木々が邪魔をしてあまり明るくはない。
上を見上げても葉が重なり合い空が狭く感じる。
そんな狭い空間に耐えかねた様子でノーディがマモに尋ねた。

「なぁまもっさん、あとどんくらいあるんだ?」
「今半分、ってところか」
「そんな長いのか・・・ユウ大丈夫か?」
「ちょっと・・・疲れたけど大・・・丈夫」
「・・・休むか」
「んむ」

手ごろな木の下に腰を下ろして適当に雑談を始めた。
ユウはあまり体力がないのでほとんど聞いているだけであったが。

「そういやさっきのネクロケスタを吹き飛ばしたあの技、何ていうんだ?」
「ああ、あれはプレイアって言ってな。祈りで敵を浄化させる神技なんだ」
「・・・全然浄化してるようには見えなかったけど」
「気にするな、ワシの性格が技にも影響してるだけだ」
「そういやユウはプレイアとかってやつできるのか?」
「うん、一応聖職者はプレイアを覚えるのが常識らしいし・・・あたし全然使ってないけどね」

数十分ほど話を続けて突然ノーディの腹が鳴り始めた。
照れた様子もなく腑抜けた声で期待通りの言葉を吐く。

「腹減ったなぁ・・・」
「食料とか持ってきてないのか?」
「うぐ・・・すぐ着くと思ってて・・・」
「これだから田舎者は困る」
「う、うううるさい!」

その時、ガサリと草むらが動く音がした。
ふざけた会話をすぐに止め、3人は草むらに意識を集中する。

「・・・ここらに生息するモンスターって?」
「[ノカン]、最悪だな」
「群れ成して襲ってくるとかってのかな?」
「よく知ってるじゃないか、感心感心」

一気にモンスターが草むらから飛び出てくる。
数はおよそ20体、ノカン一匹の力はそんなに強くないが囲まれたりしたら流石に危険だ。
ノーディは鞭を、ユウは杖を、マモは金属で出来たハンマーを構えてノカンたちとにらみ合う。
先に襲い掛かったのは一匹の一際大きなノカン、狙いはか弱いユウだった。

「させるか・・・よっ!」
「ぬん!」

ユウの顔をその拳で殴る前に赤い鞭と杖が逆にノカンの顔面を襲った。
吹き飛ばされたノカンは少し体を痙攣させると力無くだらりと動かなくなった。

「ユウ、危ないから後ろに下がって・・・ろ・・・?」
「仕返しーっ!」

ノーディの声も届かずユウが杖に光を溜め始める。
その杖をノカンの群れに突き出すといきなり地面から炎が立ち上がった。
普通の炎なら敵を丸コゲにしてしまうのだろうがその炎は外傷は負わせず、触れたノカンを気絶させてしまうだけであった。

「な、なんだありゃ・・・」
「パージフレアか・・・ワシは苦手だからできん」
「よっし逃げるぞ!ほらユウの魔法で敵が怯んでる!」

見たことのない魔法にノカンたちが怯んで飛び掛る様子を失っていた。
ノーディが一匹を蹴り倒し、逃げる道を作り出す。
マモはユウを抱え上げ、ノカンたちの中を駆け出した。


「はーっ、はーっ・・・ったくこれだから群れるモンスターは・・・」


なんとか逃げ切ったノーディが腰を下ろしたところは何故か暖かく、ふかふかしていた。
怪しく思い、一度立ち上がる。


「あれぇ?のーちゃんは?」
「んー・・・む、あれじゃないか?」
「あ、ジャイアントキキだ。かわいい〜」
「うああああああ!!」

Hunting result
無知な冒険者
『旅の心得』