Ancient memory 第五部 W


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久しぶりだな・・・この夢は。
俺が8つのときか、ルアスがモンスターに襲撃されたんだったな・・・


「何!?」

一人の剣士がカタツムリのようなモンスターに大剣で切りかかる。
しかし柔らかだと思われる体に刃は通らず、めり込んでしまうだけであった。

「俺が食い止める!ガイを連れて王宮に非難しろ!」
「わかった、必ず帰ってきなさいよ!」

茶髪の長い髪を揺らす女性がガイを力任せに担いで走り出す。
しかし数十メートルも走らないうちに目の前に水が浮かんだような姿をしたモンスターが現れる。

「ポンか・・・ポンナイトもポンポンもいるわね」
「母さん・・・大丈夫?」
「このくらい倒せないであんたの母親やってないわよっ」

剣を抜き出し槍を持つモンスター、ポンポンに切りかかる。
何度か倒したことのあるモンスターであったため、力量や行動の習性などはわかっていた。
はずなのだが

「だぁっ!」

水で構成された体を真っ二つに切り裂く。
地面にビチャビチャと水が飛び散り槍やマントが散らばった。
これで倒したと安心し、また走り始めようとするその足に槍が突き刺さる。

「母さん!」

真っ二つにしたはずのポンポンの体がまた合体し、槍を構えて襲ってきていたのだ。

「スオミの・・・水が汚れ・・・てるっ・・・てのは・・・ここまで影響されて・・・るのね・・・」

左足の太ももが貫かれている、血が止め処なく溢れ出てまともに歩けそうもなかった。
とどめを刺そうとポンポンが槍を構える、しかし槍はいきなり地面に転がる結果になった。
ガイの父親が燃える大剣で完全に水の部分を蒸発させてしまったからだ。

「あぶねぇ・・・大丈夫か?」
「うーん・・・こりゃちょっと・・・だめかも・・・」
「仕方ない、おぶってやる。ガイ、走れるな?」


「ガイ!」
「ジェイ・・・っと、王子」
「王宮内だしな。ところでモンスターの様子が変じゃないか?」
「うん、なんかポンたちが剣で斬っても元に戻ったりカタツムリは斬れないし・・・」
「ルアスにはキツい敵ばっかりだよな・・・ガイ?」
「・・・・・・剣が効かない敵にどうやって戦うんだよ・・・」
「父さんがスオミの魔術師たちを傭兵として呼んで殲滅してもらうって言ってた」
「魔法が無いと戦えないの!?仲間を身で守り敵を刃で倒し最前線に立つのが戦士じゃないの!?」
「ガイ・・・」
「戦士は剣が効かないなら何もできないのかよ!そんなの・・・そんなの・・・戦士なんかじゃない!」

投げ捨てるように吐いた言葉が返って自分に突き刺さる。
零れる涙を拭いもせずに王宮の扉を開けて駆け出した。


・・・どうだミミック、何か俺の心に文句でもあるか?
俺は強くなりたい。剣が何もできないと知ったそのときに更なる強さを求めてミルレスに渡った。
弱いことは捨ててきた、剣は俺の目指す強さの頂点ではなかった。
俺は強くなる、これからも、頂点に立つまで。
その野望まで。

邪魔するというならば貴様をこの場で葬るぞ!
さぁ出て行けミミック!俺の野望は誰にも邪魔させん!!


逃げるように闇の奥へ闇は退いていった。
闇は段々と小さく、点のように、更には跡形もなく消え去ってしまった。
闇が剥がれた場所に少しずつヒビが入り、砕け散る。
力強く、砕いたかのように。

Hunting result
夢と目標と
『野望』