Ancient memory 第五部 X


X

ここはどこかしら・・・
何も無いし・・・何も起きないし・・・

あら、光があるわね
行ってみましょ


闇の中に力強く光る一点。
そこへ向かって歩いたセルシアはすぐに光のもとへ辿り着けた。
近くへ行っても何も起こらず、ただ光が目に眩しく突き刺さるだけ。
目を瞑ったセルシアが次に目を開け、確認した風景はミミックの置いてある久しくない風景であった。
手にはいつの間にか巻物が握られている。

「3人とも無事だったのね、巻物は手に入った?」
「ちぃとばかしイヤなモン見ちまったけどな、それとこの巻物。持ち主以外は触れないみたいだ」

ジェイスが手にしていた巻物をラスアに投げつけるといきなりラスアが悲鳴をあげた。
どうやら例の電撃で感電したようだ。
自分の巻物を投げる素振りをし、ジェイスを脅かすといきなり真剣な顔になった。

「姉サン、この旅の終わりにお願いしたいことがあるんスけど・・・」
「どうしたの?」
「古代の武具を全て処分したいんス」
「・・・俺からも頼みたい、アスク帝国が武具の力に気づいて戦争の道具にしようとしてるんだ」

2人からの頼みを聞いたセルシアは手をアゴに当て、少し悩む。
しかしすぐに口を開いた、別に困った様子もなく言葉を出す。

「なるほどね・・・いいわ、古代のアイテム見つけて使おうとも思ってないし。謎が解ければ私は十分」
「ありがとよセルシア」
「そういえばテイルは?まだ戻ってないのかしら?」
「うむ、まだ目が虚ろで・・・心配だな」
「何を見ているんスかね・・・」
「見てる?見てるって?」
「セルシアは何も見なかったのか?」
「真っ暗で、光があったからそこに進んでみただけだけど・・・」
「・・・兄貴のあの時の疑問晴れるッスよ」
「・・・何を見たの?」
「実は・・・」


「みんな自分の嫌なものを見たわけね・・・私、何で見れなかったのかしら」
「まぁ見ないにこしたことはないだろ。ラスア、あの時は疑ってすまなかった」
「いやいいんスけどね、俺ッチも溜まってたこと全部吐いてスッキリしたッスよ」

お互い言えなかったことが少なからずあったようで全て吐いた3人は暗い顔をどこかへ捨ててしまっていた

。
口調もどことなく明るく、ひと段落ついたかと思ったがガイの呼びかけですぐに真剣な顔に戻る。

「テイルの様子がおかしいんだ」

ミミックの前に座り込んだテイルが突然横に倒れ、何か呟き始めたのだ。
目はさっきのように虚ろではなく、完全に何も見ていない。
まるで死んでいるかのように。

「テイル!テイル!返事しなさい!」
「おい・・・ドレイクの話じゃ・・・」

ドレイクの話だと、ミミックの中を覘いた者は廃人になりそのまま死んでしまう。というもの。
確かに今のテイルの状態は限りなくそれに近い、呼びかけにも応えず目も死んでいる。

「・・・まるで心が壊れちまったみたいだな」
「ミミックに心を喰われたのか・・・」
「待って、何か呟いてる・・・」

口をぱくぱくさせながらテイルが普段の明るい口調など微塵も感じさせない、うめき声のような声で呟く。

「ノーディ・・・ユウ・・・・・・マモさん・・・」

Hunting result
失った者と得られた物
『巻物』
『壊れた心』

これで第五部はお終いです。