Ancient memory 第五部 V


V

ここはどこだ?
俺は独りなのか?
ミミックは?
姉さんは?
兄貴は?
ララさんは?
ガイさんは?
・・・俺は?

手を前に突き出してみる、体と少し離れただけで永遠に遠くにいってしまったみたいで怖くなりすぐ引っ込

める。
後ろを向いてみる、光も何もなく自分が通ってきたのかも怪しい道を見ていると怖くなるのですぐ前を見る

。

そんな闇の中にまるで昔の映画のスクリーンのように白黒の映像が流れ出した。


クリングルがいた階層を走りぬけ、俺は2人にモンスターたちの社会のことを説明した。

「社会はまるで人間のようなんスよ、軍事力が権力の階級社会。権力も何もない平等社会
サラセンは人間からモンスターが奪った土地で、そのときは全員が一致団結していたそうッスよ」

ここで2人が納得したような顔をするハズだった。
しかしジェイスが冷たい声で喋りだす。

「・・・何で知っているんだ、サラセンが奪われたときそこにいた人間は全員やられていたハズだ」

背中が冷たくなったような気配でゾクリとする。
歯が少し震えてカチカチと小さな音を立てる。

「・・・そりゃそうだよな、お前は『モンスターに育てられた』んだからな!」

スクリーンが真っ白に輝く、目が眩んで慣れた頃にはシーンが変わっている。


激しい雨が振る中、赤子の声が戦乱の最中に響きわたる。
それを見つけるカプリコ族の魔道士、何を思ったか赤子を抱き上げ戦線から離れていった。

「哀れな、子を残し先に逝かれたか」

そんな魔道士の前に8歳ばかりの少年がナイフを持って立ちはだかった。
濃い緑色の髪を血と雨で濡らし、顔や手は傷だらけであった。
魔法で殺してしまうこともできたが空間を切り裂き、その少年を飛ばすことでそれを避けた。

同情した魔道士はサラセン奪還後、他のモンスターたちに気づかれないよう子を匿い続けた。
自分の魔力を伝授しながら。

しかしずっとバレないことはなかった。
子がやっと10歳少しになった頃、匿っていた子が見つかりモンスターに殺されかけた。
迫る剣と子の間に飛び込んだ魔道士は残る力で空間を切り裂く、子をそこに力任せに投げ込み血を吐いた。
スクリーンが真っ赤に染まる、赤が闇と同じように周りを包む。


それから魔道士の魔力を操り、俺はスオミの天才と呼ばれた。
そして魔力を操りモンスターを殺し続けている、恩を仇で返すとはこういうことだな。

・・・バーカ、何言ってるんだよ俺。

真っ赤だったスクリーンが流れるように白黒に戻る、跡も残さずに。


子が見つかり騒ぎになる、そのモンスターのたかりの真ん中で魔道士は大声で叫んでいた。

「人と我等の共存は不可能なのか!・・・たとえ生を奪い合う者同士でもいつかは解り合えると思わないの

か!」

言葉も虚しく子に対して無情な言葉が飛び交う。
ついに迫る剣と子の間に飛び込んだ魔道士は残る力で空間を切り裂き呟いた。

「・・・お前ならできるはず、争いの無い・・・世界が・・・」

力任せに投げ込まれる。


俺は争いの無い世界を望んでる、だから障害は倒している。
その奪った分の命を背負って生きることにしたんだ。
だから!俺は死んじゃいけない!奪ってきた命を無駄にしないために!


スクリーンが音もなくガラスのように割れる。
その奥に青い、スオミの町が綺麗に写っていた。
水のように淡い蒼い俺の髪が揺れ、闇が消え去っていった。

Hunting result
命を背負う
『責任』