Ancient memory 第四部 W


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「みんな、大丈夫?」
「まだドロイカンマジシャンが残ってますよぉ」
「次もブッ倒してやるぜ!って・・・槍が・・・!?」

ジェイスが槍を振り回し、手元に戻そうとしたとき槍の異変に気づいた。
先端が折れてしまっていたのだ。
いくら歴代伝わる槍でも永く使っていては壊れてしまったようだ。
その折れた場所から段々と塵のように槍は崩れていき、最後には跡形も無く消え去ってしまった。

「これじゃ戦えないじゃねぇかよ・・・」

狼狽しているうちに砂浜に大きなモノが降り立った。
砂埃がたってよく見えないが、蒼い大きな竜であることは間違いなかった。
構うスキを与えず、竜は口から紅蓮の炎を吐き出し雄叫びをあげる。

「ジェイス!一先ずアレを使うしかないだろう」
「アレ、って・・・まさかアレじゃないよな」
「他にあるならさっさと使ってもらいたいものだがな」

ガイが顎で示した先には紅の巨大な槍、ドロイカンランスが突き立っていた。
確かに槍はアレしかないが3メートルばかりあるアレはジェイスには巨大すぎた。
ジェイスは近くに駆け寄り槍に触れてから少し考えた、だが

「ええい、考えてられっか!ぬぁああああ!!」

上品ではない声をあげ、引き抜こうと鷲づかみにして踏ん張りだした。

「・・・私たちだけでやりましょ」
「そうッスねぇ・・・ってうぉわ!!」

今度は紅蓮の色ではなく、蒼い炎をラスアめがけて吐き出してきた。
寸でのところでかわしたが、砂浜が炎によって黒く焦げていた。

「こりゃ直撃したら・・・」
「真っ黒ですねぇ」
「ふんぬぅうぅううう!!」

ドロイカンマジシャンは次々に炎を吐き出してくる。
4人はなんとか全て回避しているがさすがに疲労が目立ってきた。
ここぞとばかりにドロイカンマジシャンはセルシアの方を向き、炎を吐き出した。
それは今までのような火炎ではなく、火の玉。
それも今にも消え入りそうな弱々しい火の玉であった。

「何かしら、これ・・・」

予想していなかった事態にセルシアは無防備になっていた。
このくらいならかき消せるだろうと手をあげ、振り下ろした。
その直前にラスアが火の玉が帯びる魔力に気づいた。

「姉さん危ない!ファイアブレスだ!」
「え?」

突如、腕が燃え上がった。

「っうぁぁああ・・・!」

燃え上がる腕と苦痛の声を抑えてその場にへたり込んでしまったセルシアの近くにテイルが駆け寄り
炎の魔力を打ち消す魔法「ファイアダウン」を唱え始めた。
しかし無防備すぎる、2人まとめてといわんばかりにまた口を開ける。

「危ないっ!」

炎が吐き出される直前に竜と2人の間にガイが飛び出した。
神速の蹴り技で炎を少し分散させたが大きすぎる。
薄着なガイは炎を全身に受けてしまい、やはりその場に倒れこんでしまった。

「っぐ・・・」
「うぉぉぉおお・・・っしゃ抜けたぁー!!!」

後ろで期待はしていなかった者の声が上がる。
やはり槍は大きすぎたようだ、握る手と腕が重さで震えている。

「させるかぁ!・・・っだりゃぁー!」

ドロイカンマジシャン目掛けて槍を投げつける。
しかし後ろに一歩退かせるだけで直撃はしなかった。
だが時間稼ぎにはなった。
その間にジェイスが仲間のもとへ駆け寄り槍を掴む。

「悪いな、今コイツらを死なせるわけにはいかないんだ、
俺が仲間を守るって決めたんだからな!」

突如、槍が光りだす。
ジェイスは眩しくて目を瞑ってしまったが槍は放さなかった。
手から違った感覚が伝わる
あれほど巨大で重かった槍がレッドファイアスピアのような、ジェイスにちょうどいい大きさになっていたのだ。
色も、心なしか血のような紅ではなく情熱のような紅になっていた。

それを見たドロイカンマジシャンは何もせずに崖の上へ飛んでいった。
何かを失ったように少しだけ、寂しい目をして。

「何なんだありゃ・・・」
「ジェイス・・・えらく時間かけてくれたわね・・・」

竜を見送ったジェイスの後ろに右腕を抑えたセルシアが立っていた。
岩にもたれかかったガイもこっちを睨んでいる。

「あ、いやな・・・えーと・・・結果オーライだ!」
「トクシンの実験台決定ね」
「オレも新技を考えていたところだ」
「ジェイスさん心配しなくていいですよ、あたしがしっかり回復しますから!」

3人が笑い、1人が怒鳴るがラスアだけ複雑な顔をしていた。
崖の上を見つめて。

Hunting result
仲間を守る騎士
『ドロイカンランス』