Ancient memory 第四部 X


X

大火傷を負ったセルシアとガイ、特にガイの方がひどい状態だったのだが
テイルの魔法と休憩により段々と体力を戻していった。

「にしても不思議だな、いきなり槍が縮むなんて・・・」
「あの時オレたちを守るって叫んでいたな、その槍はお前の意思に呼応してくれたんだろうよ」
「ドロイカンナイトもモンスターを守る騎士なのかもしれないわね」

結局は予想でしかない話をしながら足を進めた。
あの場所からなら船が出せる、そう思ってやっとついた場所で気づいた。

「あれ・・・船は?」
「船って・・・そういやここから船出すんだよな」
「んで、その船がどこにあるんスかね」
「もしかして、忘れ物ですかぁ?」
「・・・・馬鹿らしい」

肝心なことを忘れて歩いていた。
船も無いのに小島に渡ろうなどと考えていたのだから笑いものだ。
結局どうにもすることができず、砂場に座り込んでみた。

「でっかいカニ倒したなぁ・・・」
「鎧着た竜に乗る騎士も倒したッスね」
「炎吐く蒼い竜も追い払いましたねぇ」
「肋骨折ったス」
「大火傷したぞ」
「やめなさいみんな・・・とにかく何か手段を考えなきゃ」
「・・・手段って?」

結局黙り込んでしまった。
ほとんど絶望とも受け取れるその場所に少し古臭いが鋭く響く音が流れ込んだ。

「よーよーよー!!何辛気臭いムード出してんだお前ら?」

エレキギターのようなモノだろうか、首を前後に激しく振り、それをジャカジャカと弾いている。
それで話かけてくるのだから器用なものだ。

「何だお前・・・」
「俺か?お前そりゃ決まってんだろ、海賊だよカ、イ、ゾ、ク」
「海賊ねぇ・・・あなたたちのキャプテンの名前はなんていうの?」
「ぉ、お前興味あんのか?キャメル船長っていうんだがよ、少し前に影も形も消しちまってなぁ」
「それはお気の毒ねぇ・・・」
「(姉さん怖いッス・・・)」

セルシアの考えているとおりだった。
この海賊たちの船長がキャメル、そして船長があの孤島にいたということは・・・

「あの孤島が俺らのアジトなんだけどよ、お前等ちょっと遊んでいかねぇか?」

やはりコマリクに続く古代のアイテムが眠っているに違いない。
海賊たちの財宝ということになるがどうせ盗品だろう、気にすることは無い。

「えらく歓迎的なんだな・・・何か企んでないか?」
「企みか・・・俺たちゃ海賊、強い者はいいヤツさ。孤島でも喧嘩売ってくるヤツいるだろうよ」
「それじゃあオレたちをその孤島に連れていってくれないか?」
「おー、やっぱお前ら興味あんのか。いいぜいいぜ・・・って掟があるんだよな」
「掟?それなんですかぁ?」
「海賊要塞入場券、モンスターの中じゃ意外と人気で出回ってるんだが知らないか?」
「もしかして・・・」

セルシアがウェストバッグから一枚のボロボロな紙を取り出す。
サラセンの森を駆け抜ける途中、一つ目のモンスターが落としたチケットだ。
モンスターが使う文字なのだろうか、人間には読めない文字が書いてあるので念のため聞いてみた。

「やっぱり持ってたかぁ、時々力試しって感じに来る奴らがいるんだぜ」
「まぁいいわ、そこに連れてってちょうだい」
「そんな急かすなって」

人差し指と中指を揃えて咥え、器用に遠くまで届くような高い音を出す。
何かの合図なのだろうか、孤島で花火のようなものがあがった。

「これから迎えの船が来るからよ、それに乗れば孤島まで一目散よ!」
「サンキュー、えーと・・・名前聞いてなかったな」
「そういや言ってなかったな、俺の名前はドレイクだ。次の船長候補とも言われてるんだぜ」

そう言って腰に着けていた灰色の帽子をセルシアに投げ渡す。

「これは?」
「トモダチの証だ、俺らトモダチだろ?」
「そうだな、俺らはトモダチだぜ」
「へへ、ありがとよトモダチ!」
「そうそう、これ似合うかしら?」

セルシアが灰色の海賊帽子を被ってみせる。

「おぉ、似合う似合う。てかお前なんでも似合うから羨ましいぜ全く・・・」
「そういえば兄貴、ルアスの露店に売ってたサンタ帽被って笑いものにされてたッスね」
「ええいうるせぇ!お前だってグリーンギア帽子被ってこじきみたいとか馬鹿にされてたじゃねぇか!」
「あ、セルシアさん次それ貸してくださいー」
「だっはははは、お前ら面白いな!ん、そこのガタイのいいアンちゃんは帽子見つめてるけど被りたいのか?」
「う、うるさい!」

Hunting result
トモダチの証
『ドレイクハット』


Ancient memory 第四部

完