Ancient memory 第三部 Y


Y


脳が揺れて目が霞む、膝が折れて四つんばいになる。
気持ちが悪く下半身に力が全く入らない。
スパイダーウェブも魔力が止まったため切れるだろう。

「助かったぜガイ」
「手間かけさせるな馬鹿者」

動けるようになったジェイスは私を肩に担ぎ王の前へ連れて行く。

「こいつをどういたしますか?」
「わかっているだろう・・・殺れ」
「御意」

乱暴に捨て下ろし、槍を構える・・・が突き出さない。

「するわけねぇだろ馬鹿親父が!」
「なっ!?」

槍の先に光が集まる、その光は眩く輝き
槍と化し、処刑台に突き刺さる。

「ハボックショック!」

台が手抜きで作られていたのだろう、大きな衝撃で吹き飛んだ。
あたりは砂埃と煙で覆われ何も見えない。

「逃げるぜセルシア」
「演技が長いのよ」

本当は痛くも痒くもないのですぐに立ち上がり素早く2人の手錠を破壊する。

「ちょ、どういうことッスか!?」
「そうですよぉー」
「無駄口叩く暇はないぞ」

狼狽する2人の脇をガイが腕で掴み走り出す。
人間業とは思えないほどの怪力だ。


探せ!という声が聞こえたのは既に遠くからであった。




「さてと、ジェイス。説明してあげて」

ジェイスが使ったミルレスリンク・・・ウィザードゲートのような魔力を持つ巻物のお陰で
私たちは完全に逃げきれた。
テイルの家で落ち着いてから2人に説明を始める。

「そうだな、2人とも納得いかなくてイラついてるだろ」

笑いを堪えながら説明し始める。

「くっく・・・今までのはな、全部『演技』だ」
「「え、演技ぃ?」」
「ああ、王宮に忍び込むなんて馬鹿のするこったぜ、
少しアスクの馬鹿親父に騙されてもらったってことだ」
「ぇ、じゃあ王子なのは・・・」
「それだけは本当の話だ」
「少し家出しててな、親父が何としても連れ戻せって指名手配してたんだよ」
「セルシアさんとジェイスさんはいつ打ち合わせとかしてたんですかぁ?」
「打ち合わせね・・・してないわよ?」

へ?とラスアが口を開けたまま声を出す。

「ジェイスは裏切らないって言ったわ、それに指名手配では死刑にしないってことにしてたのに
いざ捕まえて処刑するってのもおかしい話でしょ?」
「じゃあ王子ってことは前々から知ってたんスか?」
「いえ、そこは初耳だったわ、ホント迷惑かけるヤツね」

キッとジェイスを睨む、
本人はワザとらしく体を震わせて苦笑いをした。

「それにしてもジェイス・・・少しは手加減しなさいよ」
「あ、ああ迫真の演技だったろ?って言ってもありゃギリギリだったなぁ
ナイスフォローだぜ2人とも」

『ありゃ』というのはロックスキンの盾で槍が止まったことだろう。

「人の命をなんだと思っているのか・・・」

ホッとしたようなため息をつきながらも呆れる。
そして今まで黙っていた筋肉質の男・・・ガイが口を開いた。

「話が逸れているぞ、演技の内容はどうでもいいから本当の目的を教えてやれ」
「ったくいっつもカタいんだよお前はー・・・
まぁ王子として帰ってきてやってさ、その身分なら資料室も堂々と入れるだろ?
例の短剣のことをちょちょいと調べてきてやったワケよ」
「まぁ、もう疑っても意味無さそうッスから信じますよ・・・で、結果は?」
「名前しかわからなくてな・・・まぁ一番詳しい本パクってきたから勝手に読んでくれ」

ドサリとテーブルの上に置かれたのは十数キロはありそうなとても大きな本。
古くてところどころ端が切れているがとても神秘的な気配がする不思議な本だった。
内容は作者が書いたのであろうアイテムの名前と簡単な絵が書いてあった。

「綺麗に反り返ってて・・・金色の・・・ん、あったッスよ」
「カチダガーっていうそうですねぇ」
「そうだ、メント文明では高級品だったらしいぜ」
「ま、今日は疲れたでしょ。これからのことは明日になってから考えましょ」

4人からは意義は出なかった。

Hunting result
『カチダガー』
『仲間』
『信頼』