Ancient memory 第三部 X X 「さて・・・騙された分いろいろとお返ししなくちゃね」 「へへっ、そういやお前と組み合うなんて初めてだな」 「そういえばそうね・・・それじゃ」 「「お手柔らかに」」 同じ言葉が重なったのが合図、2人は前へ飛び出す。 距離を取ったとはいえ相手は槍、リーチは話にならない。 「だらぁっ!!」 突き出した槍が私の肩を掠める、傷はできていないがおかしい。 「服が・・・?」 明らかに焼け焦げた跡が残っている。 「気づいたか・・・この槍は『レッドファイアスピア』、ルアス騎士団に伝わる・・・」 業火の槍だ! と叫び再度突きを繰り返してくる。 こちらは短剣、近づかなくては攻撃できない・・・ が、ジェイスは突きを連続で繰り出し近づく隙を与えない。 しかも槍の熱風が私の体力をどんどん奪っていく。 これは・・・ナメている暇はなさそうだ。 腰に短剣をしまい、鞭を取り出し先にあまり強くはない魔力を込める。 「どうした!お前はそれ程度の実力じゃなかったハズだ!」 ジェイスの挑発に乗らず鞭を振るう。 目標はジェイスではない。 1、2、3、4、5発をジェイスを中心に円の形になるように叩きつけた。 しかし円を完成させるにはあと3発足りない。 「っち、ちょこまかと!」 「(もうすぐ・・・もうすぐで!)」 鞭でジェイスを叩くつもりはないので周りをグルグルと回り、 そして槍の攻撃を避けながら6、7発目も叩きつける。 「いい加減にしろっ!ブラストアッシュ!」 今までの速さとは比較にならない無数の突きを繰り出してくる。 横へ大きく飛びのけることでなんとか避けたが・・・ 足が滑ってしまった、先ほどからの熱風で滴り落ちた私の汗だ。 「終わりだ、あばよ、セルシア」 眼前に槍が迫る。 死を覚悟・・・したがいらぬことだったようだ。 「ロックスキン!」 「でぇやっ!」 ガィン、と金属音が耳に残る。 眼前には先ほど捨てた盾と赤い槍の先があった。 どうやらラスアが盾を蹴り、その盾にロックスキンをかけて槍の突きを止めてくれたようだ。 槍の熱もあって少し貫通していてロックスキンが無ければ私は今頃・・・ 「ありがと、2人とも」 そう言って8発目の鞭を叩く。 間髪入れず 「スパイダーウェブ!」 8つの点で結んだ蜘蛛の糸をなす魔方陣がジェイスの動きを止める。 今がチャンスと2人の首を束縛していた縄を斬り、手錠を外そうとした。 先ずはラスアの手錠をと後ろに回りこんだ直後。 「すまないな」 号外を配っていた・・・筋肉質の男が私の後ろ首を強かに打ち据えた。 Hunting result 『失敗』