Ancient memory 第三部 W W 後ろ手に手錠、首に縄をかけられ台に登らされる。 今更人が集まってくる、国家国民総出の私たちを陥れる作戦だったようだ。 「ね、姉さん・・・絶体絶命ッスかね・・・」 「さぁ?ま、死なないことは確かよ」 「どこからそんな自信が沸いて来るんスかぁ・・・」 「ラスアさん、セルシアさんを信じましょうよぉー。ホラ、手、手」 「手・・・?あっ」 「シッ、静かにしてなさい」 セルシアは手錠の鍵を器用に指先だけでハリガネを入れていた。 「頼みますよ・・・姉さん・・・」 「はっはは、いい気味だなセルシア。この永い付き合いは全てこのためにあったんだぜ」 「(少しでも時間を稼がないと・・・)俺たちを陥れたんスか・・・」 「今更気づいても遅いんだよ、お前等はここで死ぬ。死人に何を教えても意味はないだろ?」 槍の先をセルシアの喉元に突きつける。 そして背後でカチャカチャという音が何かに引っかかった音に変わる。 「アスク王、せめてララさんだけでも救ってやってほしいッス、彼女は何もしてないんスよ」 「ならん、犯行声明はジェイスから聞いている」 「そういうわけだ、残念だったな」 「・・・!そっちもね!」 ガチャリ、と鍵が開いた音のすぐ後に重いモノが地面に落ちたゴトリ、という音が聞こえた。 手錠が外れたセルシアは素早く二本の短剣を抜いた。 一本は自分の首にかかっている縄を斬り 一本はジェイスの首筋に当てた。 広場が大きなどよめきで覆われる。 「五分五分ね、一旦離れない?」 「っく!」 お互い後ろにステップして距離を取る。 幸い処刑台は大きく広い、戦うには絶好の場だ。 「姉さん、無理しないでくださいよ」 「でも頑張ってくださいねー」 さっきまで緊張していたのに気楽な2人だ。 2人の首を束縛するあの縄を斬って逃げ出したいが・・・ジェイスがそんな隙を作ってくれはしない。 小さく邪魔にならない盾を地面に投げ捨て両手で短剣を握る。 「あ、待ってくださいセルシアさん・・・ホンアモリ!」 空中に赤く細かい粒子が大量に現れる、そしてそれは剣の形を作りセルシアに刺さった。 痛いわけではない。 寧ろ、体に強い力が沸き起こる。 「これで腕力くらいなら補えますぅ、頑張ってくださーい」 「あ、俺ッチも・・・ヒットストライク!」 同じく赤く細かい粒子が剣の形を作りセルシアに刺さる。 私は2人にニコリ、と微笑みかける。 そして風が足に纏わりついた。 Hunting result 『二本の剣』