Ancient memory 第三部 V


V

私を呼ぶ声で目が覚める、ラスアの声だ。

「姉さ〜ん」
「ん・・・」
「なんか兄貴が書き置き残して行っちゃったんスよ」
「か、書き置き?」

無造作に置かれた紙には簡単にこう書いてあった

ルアスで待ってる
        ジェイス

「何がしたいんだか・・・」
「あ、姉さん例の短剣知りませんか?」
「いえ?私は持ってないけど・・・」
「じゃあ兄貴が持って行ったのかなぁ・・・」

どうやらラスアたちが目覚めたときには短剣もジェイスと共に消えていたようだ。

「まぁいいわ、仕度をしてルアスへ向かいましょう」


そしてラスアの指が空間を切り裂いていく。



ルアスの城下町の入り口、大きな門が待ち構えているところへ3人は降り立った。

さてジェイスはどこかとあたりを見渡したその時

「号外号外ー!お尋ね者ジェイスが捕まったよー!」

茶色い髪をジェイスよりも逆立たせた筋肉質の男が
新聞らしきものを通る人に配っている。

唖然、思わず頭を抱えてしまう。
まずは状況を知ろうとセルシアが近づく。

「一枚いただけるかしら?」
「あいよっ」

というかこの世代に号外号外と叫ぶ人がいるだろうか、妙に怪しいと思いつつ新聞を受け取る。
男が少し微笑んだ気がしたが、あまり気にもとめずセルシアは文を読み上げる。

「えーと、お尋ね者ジェイス捕まる・・・午後2時にルアス広場にて公開処刑を与える・・・今何時かし

ら?」
「今は2時10分前ですねぇ」
「そう、それじゃあ今から広場に向かいましょう」
「ちょちょ、姉さんなんでそんなに冷静なんスか!」
「大丈夫よ」
「何が大丈夫なんスか!兄貴の命の危機ッスよ!?」
「大丈夫だって、いいから任せておきなさい」
「うぐ・・・」

男が微笑んだように、セルシアも微笑を浮かべていた。
そして少し早歩きで広場へ向かう。


2時直前に広場につく。
処刑台の上には見慣れた仲間が手を後ろに回されている。
そして広場は目の前で犯罪者が死ぬのを楽しみな見物人で溢れて・・・はいない。
というよりほとんどいない。

「気をつけてね」

セルシアがそう言ったので少し不思議に思ったが一応2人は警戒し始めた。

「これより!犯罪者ジェイスの処刑をー・・・」
「始まったみたいですぅ」
「行わず!真の犯人セルシアとその仲間の処刑を行う!」
「なっ!?」

ラスアが絶句する、早く逃げ出そうと身構えたが
遅い、すでに3人は兵士に取り囲まれていた。

「どういうことッスか!兄貴!」

力ずくで押さえつけられ、どうにもできないラスアはジェイスに向かって叫ぶ。

「どうもこうもこういうことだ」

後ろに回されていた手を解放され、隣にいた兵士から赤い槍を受け取る。
そして処刑台から降り、3人の方へ歩いてくる。

「俺はお前たちの知ってるジェイスなんかじゃねぇよ」
「・・・・・・?」
「アスク帝国騎士団長でありアスクの世を継ぐ者、ジェイス・アスクだ!」
「お、王子さまなんですかぁ?」

赤い槍を3人に向け言葉を続ける。

「まんまとかかってくれたぜ。セルシア、ラスア、テイル、悪かったな」
「ふははは・・・よくやったわが息子よ」

いつの間にかジェイスの隣にいた老人・・・アスク王が口を開く。

「ありがとうございます、父上」
「貴様らクズどもは窃盗罪で処刑する。王宮の宝を盗んでくれたんだ。無論、極刑じゃ」

3人の手が重い錠で封じられた。


Hunting result
『危機』