Ancient memory 第三部 U


U

目が覚めたのは夕方、テイルも帰ってきて夕食の支度を始めていた。
起きたのは一人だけ、冷たい床で倒れたジェイスだった。

「あ、ジェイスさんおはようございますぅ〜」
「すまねぇな、今手伝う」

台所へ行き、手とついでに顔を洗い手際よく料理を始める。

「意外と上手なんですねぇ」
「まぁあの3人の中でまともに作れるの俺しかいないしな」
「それは大変ですねぇ」
「あーもう大変どころじゃねぇよ、特にセルシアの作った料理はこの世のものとは思えな」

スカン!と小気味いい音が出た。

「あ、セルシアさんおはようございますぅ〜」

ジェイスの後ろで少し曲がったおたまを持ったセルシアが立っていた。



テーブルを4人で囲むように座り、食事を取り始める。

「そういえばこれからどうするんですかぁ?」
「んー・・・まずこの短剣の正体を調べたいな」

左利きのジェイスは器用に右手で短剣を回してみた。

「といってもメント文明についての資料がある場所なんてそうそうないッスよ」
「いーや・・・一つだけ心当たりがある」
「さすが兄貴!で、どこッスか?」
「あんまり近づきたくないんだがな・・・王宮内の資料室しかないだろ」
「げっ・・・そりゃ近づきたくないッスね・・・」
「アスクの野郎は暴君だとかって噂もあるしな」
「忍び込むしかないッスかねぇ・・・姉さん?」

さっきから黙ったままのセルシアを不思議に思いラスアが話しかける。
返事はなく、代わりに変なことを呟いた。

「料理でも覚えようかしら・・・」
「え?」



夕食を食べ終わり、あまり体力がないラスアは早々眠りについてしまった。

「じゃあ明日王宮に忍び込むのね・・・お尋ね者のくせに・・・」
「まだあのこと怒ってるのかよ、確かにカメリアンの一欠けらなんかじゃ何も儲けにもならねぇけどさ・

・・」
「あの〜、あたしもついて行っていいですかぁ?」
「へ?」

いくら間の抜けた子とはいえ盗賊の仕事に同行するなど馬鹿げた話だ。
勿論承諾するワケもない。

「あのね・・・貴女は聖職者なのよ?盗賊の仕事を協力するなんて重罪よ」
「アスク帝王は暴君と聞いています、それを放っておくのは聖職者として重罪ですぅ」
「まぁまぁまぁいいじゃねぇか、人間何事も経験だぜ?」

珍しくジェイスが慌てた様子でテイルの同行を認める。
怪しい、そう思うしかないだろう。

「ジェイス、何か隠してない?」
「い、いいいやぁ?何も隠してないぜ?」
「じゃあ何を慌てているの?」
「お、俺は慌ててもいねぇよ」

ワザとらしく口笛を吹いて誤魔化そうとしている。
足がドアの方へ動き出そうとしていたので私は腰につけた鞭を手にとった。

「ぐえっ!」

素早く首に巻きつけ軽く引き寄せる。

「言いなさい」
「はい・・・」

テイルが「すごーい」とでも言いそうな目でこちらを見ていたがとりあえず無視した。

「実はさ、ルアスからの指名手配で俺は殺してはいけないことになってるだろ?」
「ま・・・妙だとは思ってたわね」
「少しさ・・・事情があるんだな、これが」
「何よ?」
「いや、これだけは言えない、ルアスに着いたら全部わかるから・・・今はカンベンしてくれ」
「・・・信じていいのね?」
「ああ、絶対、裏切らない」

今度は珍しく真剣な顔で頼み込む
ここまで言われたら無理強いして聞くほど鬼でもないのでこれ以上はやめておいた。

明日になれば全てわかる、大丈夫。決して遅くはない。
何故か逸る気持ちが沸いてくるがそう思うことで無理矢理沈めて眠りについた。

Hunting result
『仲間』