Ancient memory 第二部 W


W

大人しいモンスター、バギが多数生息する階層を抜け2階へ降りた。
そこにいたのはバギによく似た白い体に黒い斑点のモンスターだ。

「お、またバギか。ちょっと触ってみるかな」

ジェイスが興味津々でモンスターに触れてみる・・・その直後

「あいだだだだだ!?」

どこからともなく現れた大量のヘビに手を噛まれジェイスが大声をあげた。

「あー、それ[ダルマシアンバギ]ッスよ。ええっと確かー・・・」
「いいからヘビを早くとってくれ!」

私は短剣でヘビを片っ端から斬っていく、
なんとか片付け、そのダルマシアンバギというモンスターを見つめてみた。

「いてて・・・んー、なんだか・・・気味悪いな、体中黒い斑点で・・・太ってて・・・」
「だからダルマシアンなんじゃないかしら?」
「ああ、ダルメシアンとかけたのか」
「バギもダルマっぽかったわね」
「確かー・・・凶暴でゾンビ化した体内に大量のヘビを住まわせているモンスターッスね」
「何ィ!?」
「大丈夫、ヘビに毒は無いッスよ」
「そこじゃねぇよ!走れ!」

ラスアが今頃モンスターの特徴を思い出す。
ゾンビにいい思い出が無い私たちはすぐさま走り出した。





息を荒くしながら3階へ辿りつき
物陰に隠れながら部屋の中の様子を見る。

「またダルマシアンバギがいるぜ・・・」
「凶暴で怪力でさらにヘビも使うとは厄介ね・・・」
「あぁ、また言い忘れたんスけど」

またラスアが説明しようとしたが

「うっほー、宝箱だー!!!」

いきなりジェイスがダルマシアンバギに駆け寄り、ヘビの出入り口を手で漁り出した。

「・・・」

セルシアがぽかんとした顔で立ち尽くす

「人の思考を掻き乱して混乱させる魔法も使ってくるんスよ」
「遅いわよ!!」

衝撃を与えて思考を元に戻させようと
ジェイスの後頭部を肘で殴りつけ、軽く脳震盪を起こさせる。

「ハッ!俺は何を?」

その頬にはヘビが噛み付いていた。





さらに潜り続け4階に・・・

「なんか俺、今日ロクな目に会ってないよな?」

頬を撫でながらそう呟く、勿論顔中傷だらけだ。

「精神安定剤くらい持ってくればいいのよ」
「ジェイスの兄貴は思考回路が単純なんじゃないッスか?」
「修行が足りないのよ、はいヘルリクシャ」
「なんかボロクソ言われてるしなぁ・・・」

セルシアがウエストバッグから薬のビンを取り出し、ジェイスに渡す。
彼は手渡された赤い薬を一気に飲み干した。
不思議と顔の傷がうっすらと消えていく。

「そういえば逃げ出すときから何か握り締めてるッスね」
「あぁ、これか。アイツの背中の鞄なんだけどさ・・・」

ゲフ、と飲んだあとの一息をついて盗ってきた鞄を弄ぶ。

「汚いわね・・・ちょっと見せてくれない?」

ダルマシアンバギの鞄を渡そうとジェイスが鞄を投げた。
セルシアが取ろうとした・・・が
いつの間にか鞄が消えていた。

「あれ、空中で消えた・・・?んなワケ無いよな・・・」

3人であたりをキョロキョロと見渡す。

「ん、あの箱の中から鞄のベルトがはみ出てないッスか?」
「いつの間に・・・」

ラスアが指差す方向には何の変哲も無い箱が無造作に置かれていた。
手を伸ばし箱の蓋を外そうと、その手が他の手に叩かれる。
よく見えなかったが確かに叩いた手は箱から出てきていた。

「キャッ!?」

思わず手を引っ込めるがどういう理屈なのかは全てわかった。

「なーるほど、これは何の変哲も無い箱だな」

ジェイスがニヤニヤしながらわかったことを言う。

「そうッスね、よく燃える普通の木の箱ッスねー」

ラスアも悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「ちょっと寒いから燃やして温まらない?」

私も一緒に笑いを堪えながら一つ提案する。
気のせいか、箱が少し震えている。

「んじゃ、ファイア〜・・・」

ラスアの手が赤く光ると
箱から鞄が投げ出され箱自体は素早くどこかへ消えていった。

「あれは[ボックス]。イタズラ好きなモンスターッス」
「まぁ迷惑な奴だってことだな」
「可愛い鞄〜」

男二人は邪魔そうに話すが
セルシアだけボックスに興味が無いようだ。

こんな仄々とした探索が続けばよかった。
モンスターにも平和が来ればよかった。

Hunting result
『バギバックパック』