Ancient memory 第二部 V


V

異常に大きい門をくぐり抜け、サラセンへ入った・・・直後。

「人間か?」
「ん、モンスターの街ってのは本当なんだな」

話しかけてきたのはやはりモンスター。
だが別に敵対意思はないようだ。
その証拠にこう言ってきた。

「ここはモンスターの街だ、お前たち人間には落ち着けるかわからんが・・・」

ゆっくりしていけとまで言われた。

「なんか拍子抜けッスねぇー」
「平和に終わるならそれがいいんじゃないの?ジェイスなんて意気投合してるわよ」

武器屋に立ち寄ったあと、ジェイスがいないと思ったら
武器屋の主人と何か熱心に語り合っては大声で笑っていた。

「で、なんかあの蝸牛のオバさんがこっちを見つめているんスけど・・・」
「あら本当、ラスアのこと気に入ったんじゃない?」
「ちょ・・・冗談やめてくださいよ姉サン・・・」



「へぇー!オバちゃんの出身はあのスオミの洞窟だったのかー」
「そうだよ、あたしゃホントはこんな乾燥したとこは苦手なんだけどね」

結局語り合っている。

「また私だけ・・・ね」

人付き合いが苦手なのかしら、とも考えたが似合わないのですぐやめた。
することが無いので街を歩き回っていたらちょうど北東のところが賑やかになっていた。
モンスターたちは大きく、女にしては身長は高いと思っていたがやはり敵わなかった。

なので隙間をすり抜けて最前列に出ることに
そしてやっと抜け出せた。
そこは大きく丸いカタチをしたステージがあった。
それに見とれていると・・・

「おぉ勇敢なる人間よ!!」
「え?」

会場がざわめく。

「次の挑戦者はこの人間の娘だぁー!!」

ナレーション役の黒く大きなディドが大声をあげる。
すると会場のテンションが一気に最高潮に達した。

「なんなの・・・これ・・・」

「さぁステージへ」

後ろにいた筋肉質のモンスターが私を担いでステージへ持って行く。

「きゃっ」

下ろすとき乱暴に投げられてしまったが。

「さぁ準備はいいか?レディー・・・ファイトッ!」

黒ディドの声を合図に反対側のステージにモンスターが現れる。
大きな剣を持ったカプリコだ。

「えっ?ちょっと!」

戦うしかないようで・・・
カプリコはもう剣を抜き出し走ってきた。
大きく振りかぶり、振り下ろす。

それを後ろに軽くステップしてかわす。

「これくらいなら勝てるけど・・・あまり傷つけたくないわね」

今度は横に切り払ってくる。
それをジャンプして避けると・・・

「甘いっ!」

すぐ追撃がきた、空中で身動きが取れない。

「(ツバメ返しっ!?)」

私は急いで盾を構え、すりあげるようにして剣の軌道を変える。
もう手加減してたらこっちが危ない。

剣の軌道が変わり少し体制を整えるのに
時間がかかったカプリコの胸元へ一瞬で近づく。

短剣を首に当てる。空中から降りてから数秒も経っていない。

「勝者!人間の娘ー!」

これでももうマイソシア憲法でお酒は飲める歳なんだけど、と
少し呼ばれ方に不満を持ちながらステージを降り、ナレーションの黒ディドに言う。

「私はエントリーしていないのですが?」
「闘技場に入った時点で全ての生物がエントリーしたことになっております」
「じゃあこれ以上の試合は棄権ということで・・・」

早く立ち去ろうとすぐ振り返り歩き出す。

「あと2回勝つと賞金が出るのですが・・・」

情けない、足が止まってしまった。




「ん、セルシア何だその金は?」
「え、えぇ、ちょっとね・・・」

金に目が眩んでしまい結局2回目3回目のモンスターを倒してしまった。
勿論賞金も。
私たちの通貨と同じみたいで助かった。およそ20万グロッド、なかなかの大金だ。
思いっきり「G」と書いた袋に入れて渡されたのだから、困ったものだ。

「なんか姉サンの後ろつけるモンスターがいるんスけど・・・?」
「デレデレしてるしな、何があったんだ?」
「な、何でもないって!」

カプリコ族のモンスターが気安く私の名を呼ぶ、しかもさん付けで。
他にも筋肉質の蝸牛が私の戦いに惚れてしまったとか大声で叫ぶ・・・

「「気持ち悪・・・」」

二人が本当のことを言う。

「は、早くサラセンダンジョンへ向かうわよ!」

Hunting result
『20万グロッド』