Ancient memory 第十部 [


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階段を降りきった4人の前に立ちはだかったのは、奇妙なモンスター。
大きな帽子、大きな手、大きなコート。
まるで紳士のような姿をしているが帽子もコートもボロボロだった。
勿論、手も。

「シンニュウシャ、シンニュウシャハッケン。ハイジョハイジョハイジョ」

踏み込み無しで一気にこっちに飛んでくる。
まるで浮いているようだ。

「ぐっ・・・!」

ラスアがかわし切れず、直撃はしなかったが頭を殴られてしまった。

「意外に速いッスね・・・」
「ハイジョ、ハイジョハイジョハイジョ・・・」
「何言ってんだコイツ・・・」
「ノー君後ろ!」

階段の前で止まっていたため、追いかけてきたケティハンターに気づかなかった。
鋭い牙で噛み付かれたかと思ったが、寸でのところで鞭の一部を噛み千切られただけだった。
鞭をすぐに吐いたケティハンターは奇妙なモンスターの方へ跳躍して行った。

「くっそ、鞭が・・・何ッ!?」

仲間かと思われた2体だったが、奇妙なモンスターがケティハンターの左胸に手を突き刺した。
テイルが目を逸らす。もう、ケティハンターは物体になっていた。
血迷ったのかと思われたが、ケティハンターの鎌を奪いそれを構える。
さきほどと同じように踏み込みが無い、いつ来るか予想がつかない。
セルシアは前に出、短剣を交差して鎌を受け止める。
間髪入れず蹴りを入れるが肉体の無いコートに蹴ってもあまりダメージは無さそうだ。
どうにか退いてノーディの元へ戻る。

「私の鞭を使いなさい。大事にしてよ?」
「お、おう」
「姉サン、あのコートと手、見覚え無いッスか?」
「スターとマニアックとメドハンドに似てるわね」
「帽子はほかの地域に生息する[ギア]ってモンスターッス。
おそらくネクロの魔力で作られた合成モンスター・・・」
「解説ご苦労」

洞窟内に冷たく響き渡る声の主を探した。
だけれど首を回せば、そこには圧倒的な数のネクロケスタ。

「囲まれた、ッスね」
「[ファシーネ]は我等の作り出した殺戮モンスター。
いくらお前らが歯を立てようとヤツには傷一つつかん」
「そんなの試してみなきゃわからないッスよ、姉サン!」
「わかってるわ、ヤツの属性は・・・」

セルシアが射抜くような目でファシーネを睨む。
他の人間からは睨んだようにしか見えないがセルシアにはわかった。

「風ね」
「了解!」

一気に洞窟内の温度が上がった。
原因はラスアの生み出した巨大な火球。
ファシーネの上に生み出されたファイアストームは少し小さめだったが、
あのコートや帽子を消しズミにするには十分だった。

「消えろっ!」
「・・・トウブ、ゾクセイフヨ。れどぎあモード」

落ちて、爆発するハズだった。
何も起こらない。
ファシーネの帽子は汚かったが白かった。
だけれど、今は赤い。

「属性付与だと・・・」
「接近戦しか無意味なんだろ?引き千切っちまえばいいんだよ」

跳びかかって、押さえつけようとしたノーディの視界から突然ファシーネが消えた。
まるで、さっきのケティハンターのように。

「まさか・・・」

理解したときには遅かった。
胸を鎌で深く切り裂かれてふっ飛ばされたノーディの口から鮮血が噴出される。
インビジブル、さきほどのケティハンターのように。
赤く染まった鎌を振り回し、透明状態から戻る。

「ファシーネは成長する。殺した相手の能力を得ていくのだ」
「テイル!リカバリお願い!」
「は、はいっ」
「ラスア・・・どうにかならないかしら」
「ネクロケスタに作られたモンスターなら、原動力はヤツ等の魔力・・・」
「根っこを叩けってことね。ヤツ等の頭を倒せば統率が乱れるかも・・・」
「多分、さっきから偉そうに話してるアイツッスね」
「私がファシーネを抑えるわ。頼んだわよ」
「任せてくれッスよん」