Ancient memory 第十部 Z


Z


ダンジョンに潜るのは久しぶりだ。
時間の感覚がやはり無くなる。

5度目の食事を取った。
サラセンダンジョンに入ったときは確か真昼。
昼食、夕食、朝食、昼食、夕食。
単純に計算すればこれから3日目へ入ることになる。
もっとも、途中でとった睡眠の時間がいつもどおりの時間であれば。の話だが。

「多分、ケティがいるってことはケティハンターも出るッスよ」
「そう・・・」
「なかなか強いッスから、あまり油断は・・・」
「説明の余地はないみたいだぜ」

薄暗い空間の中に光る金色の瞳。
そしてその隣で鈍く光る銀色の鎌。

「いっそ逃げちゃいませんかぁ?」
「それがいいかもしれないわね」

2人の言うとおり、周りには既に数え切れないほどの金色の瞳が浮かんでいた。
逃げた方が、というより逃げなければいけない。




「はっ、はっ・・・階段、まだ、ッスかね」
「随分、走ったのに・・・おわっ!」

全力で走って逃げてきたが一向にケティハンターの数も減らず、さらに階段も見つからない。
息が切れてきた頃、ノーディの目の前の地面に鎌が突き刺さった。
ケティハンターは近くにいなかったハズなのに。

「インビジブルかよ!ちくしょう猫のくせに・・・ディテクション!」

かつて船長が使った眩い光を鞭の先に溜め、たたきつけて放つ。
目も眩むほどの光はケティハンターの姿を闇から引きずり出した。
運よく彼らも光に目が慣れないようだ、怯んでいた。

「見えた!階段よ!」

次こそネクロの拠点地だろうか。
ディテクションで明るくなったこのフロア。
しかし次の階層へ降りる階段はまた闇に染まっていた。

シンニュウシャ、ヨンタイ。
ぷろぐらむハ、ハイジョ。

「何か、聞こえませんでした?」
「いや?空耳だろ」

もつれる足をもつれないように叱りつけ、急いで階段を降りる。
ケティハンターはまだ、まだ鎌を持ち追いかけて来ていた。


Hunting result
『一時の光』