Ancient memory 第十部 Y Y 一年前の冒険の日々はただ楽しくてただ謎を解きたくて。 ましてや相手を殺すとかそういうことを考えるなんてあまりなかった。 その中で私たちが足を止めて悩んだ場所、クリングルとアズモたち。 「姉サン・・・こんなことってあっていいんスかね・・・」 「・・・」 「こんな、こんなことって・・・!」 彼らは戦った。 そして死んだ。 それだけのこと。 そう、それだけと思え。 走り抜けたあのフロアには二種族のモンスターの死骸がただ転がっているだけだった。 私は探した。 生きている誰かを、生きている誰かがいるかわからないけれど。 ただ必死に、それにすがりたくて。 情けない。 「ぅ・・・ぅぅ・・・」 呻き声が聞こえた。 壁にもたれかかっているモンスター、見分けがつかない。どっちだ? どちらでもいい。もう、どちらでもいい。 「何があったの?教えて、ここで何があったの?」 「地位・・・に目・・・が眩んだクリ・・・ングルが・・・殺し合いを・・・」 「・・・殺し合いを?何が・・・」 モンスターの首が力なくうなだれる。 目は開いたままで、何も見なくなった。 「テイル・・・」 「・・・ごめん、ごめんね」 「・・・」 何があったのだろう。 地位といっても元々彼らはアズモを下に置くクリングルはなかなか階級の高いモンスター。 クリングルの中にもまだ階級はあるが、それに飢えたというのだろうか? そんな無茶を何故、何故したのだろうか。 死ぬとわかっていて・・・ 「・・・ネクロ教団、ッスね」 「先へ進みましょう」 情けない。 手遅れだった。 誰も私たちを責めることはないだろう。 情けない。 「前は、ここで帰ったのよね」 「そうッスね。カチダガーをスターが落として・・・」 「その先は、私たちにもわからないわ。2人とも気をつけてね」 マニアックとスターを軽く追い払い、階段を降りて行く。 一年前より確かに私たちは成長した。 けれどそれは相手を殺すための技術。 誰かを守るために鍛えたと言えば聞こえは良いだろう。 甘えたことを言わないで。 守るには襲う相手を殺さなくてはいけない。 階段を降りきったフロアには黒い猫、赤い猫。 赤い猫? 毛が赤いのではない。よく見てみれば全て理解できる。 血だ、赤い部分全て血。 正気を失った一部の[ケティ]が共食いをしているのだ。 「ケティ、あまり殺したくないわね」 「ネクロ教団の魔力で自我を失ってます・・・ね」 「・・・ゴメンな」 階段をまた降りる。 振り返ってはいけない。 彼らもこんなことはしたくないハズだ。 点々と赤と黒の塊が道を作るように床に倒れていた。 許さない。 自分でもわかる、これほど怒りを感じることは初めてだ。 「セルシアさん・・・?」 「ごめん、ちょっとだけ」 階段で足を止め、降りた段を逆に登る。 小さな声で、泣きそうな声で、なんとか搾り出した声。 ごめん、ごめんね。 情けない。 Hunting result 『怒り』