Ancient memory 第十部 \


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既に力勝負では勝てないとわかっていた。
爆弾を使うにも下手をすれば洞窟が崩れてしまう。
一発で仕留めるしか方法は無いようだ。

セルシアも自身にインビジブルをかける。
船長の時以来、全く使っていないが完璧に気配を消すことができた。
このまま後ろから・・・

「無駄だ」

ネクロケスタの、嫌な声が響いた。
間髪入れずファシーネがディテクションを放っていた。
ノーディと同じように・・・

嫌な声を思い出す。
ファシーネは、殺した相手の能力を得る。

「まさか!」

インビジブルを解除されながら、ノーディたちの元へ駆けつける。
そこには体の大半を真っ赤に染めたノーディと腕を彼の血で染めたテイルの泣き顔があった。
事態は思っていたよりも深刻だ。
彼は、息をしていない。

刃が心臓にまで届いてしまったのだろうか。
何度もリカバリをかけるテイルだったが、その光が暖かくノーディの傷を癒すことは無かった。
魔法で傷を癒すということは使う相手の自己再生能力を一時的に高めているだけのこと。
自分で治そうという働きが無ければリカバリは作用しない。
死んだ、ということになるのだ。

油断した。


ああ、あ、あああ・・・
なまあたたかい。
背中は焼けるように熱い。
喉が渇く。
四肢に力が入らない。
目が霞む。

あれは、誰だ?

べしゃり、と水を含んだ布が投げられたような音を立てて倒れるあの人は?
テイルの悲鳴が聞こえる。
ああ、ラスアか。
彼もやられてしまったのね。
私たちはここでオシマイなのかしら。
第一世界を救うなんて、課せられた使命じゃないのになんで頑張っているのだろう。
謎を解きたかった。ただそれだけなのに。
もう、いい、疲れた。












誰?
もう起こさないで。
このまま眠らせて。
背中を押さないで。
手を差し伸べないで。
目を、開けさせないで。


ファシーネに背中を深くえぐられた傷は癒えていた。
数え切れないほどのネクロケスタたちもほとんどいなくなり、力が強い者と思われるネクロしかいない。

まだしっかりと動かない手足を無理矢理動かし、なんとか立とうとする。
しかし途中でバランスを崩し倒れそうになった。
だが私の体が地面に強くぶつかることはなかった。
この腕は、私を支えてくれるしっかりとしたこの腕は?

まだ目が霞んでいる。
赤い髪、私より高い背。
紅の長い槍。

「おう、起きたか」