Ancient memory 第十部 ]


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「おう、起きたか」
「・・・遅いわよ」
「ヒーローってのはピンチの時に来るモンだろ?」
「ピンチ通り過ぎてたんだけど?」
「そういうなよ、ほらやるぜ」

そういえば抱きかかえられている体勢になっていた。
少しだけ恥ずかしく思ったが気を取り直して敵を探す。

「そういえばファシーネは?」
「ファシーネ?ああ、あの布ッキレか。なんか知らんけどテイルに触れた瞬間塵になっちまった」
「テイル、そうだ!ラスアとノーディも大丈夫なの!?」
「ああもう、耳元で叫ぶな。よく見ろよ、あんな元気に動いてるだろ?」

たしかにノーディは死んだと見えた。
しかし今は、寧ろ力がみなぎっているようにネクロケスタを捌いている。
テイルも何かに目覚めたように
今までに無いほどの恵みの魔法を放ち、ラスアとノーディの補助をしていた。

「ま、いいわ。あとでたっぷり説明してもらうからね」
「今のうち言い訳でも考えておくかな」



どんどん数を減らしたネクロケスタの大群はすでに一体だけを残すほどになっていた。

「我々でも解くことのできなかった古代蘇生の魔法を扱うなど・・・!」
「蘇生だと?お前のしたことはただのデク人形つくりだろ」
「ホント嫌な思いさせられたッスよ」
「悪いですが、あなたを許すことはできません」
「ったくなぁ、助けに来たと思ったら死屍累々だなんて二度とゴメンだっつの」
「あなた、名前は?」

ネクロケスタを囲むように5人が並ぶ。
武器を構えて命が助かるなどは絶対にないことを認識させ、一人ひとり思うことを言っていった。

「・・・ムタシャだ、名前など今更何に使おうと」
「沢山の命を消してきたあなたは、その命の名前を覚えているかしら?」

そうだ、命はこんな軽くあっていいものではない。
生きて行く上で奪わなくてはいけない命があっても、自分の欲望だけに任せて殺すなどふざけた話だ。
ネクロ教団は沢山の命を消した。
実際蘇った命など一つも無かった。
できたのは仕組まれた動作をただ繰り返す人形。

一つだけしかない命をせめて覚えておこうと、生物は覚えていくことを誓った。
誰にも覚えてもらえず消えていく命なんて、悲しすぎる。

「せめてもの哀れに、覚えておくわ。ムタシャ」

左胸に深く、短剣が突き刺さった。


Hunting result
『重いモノ』


Ancient memory 第10部
完