8話、命の入れ代わり


「貴様・・・何故、何故生きている!!」

船長が怒りに溺れ剣を振るう。

「んなの簡単な理由さ、アンタの剣と俺の首まわりに同じ強さの電気を流した、
 同じ強さ、同じ属性、そして雷の特徴を利用させて二つを反発させたってこと」

「あの状況でそんなことが・・・」

「できるね、人間やるときゃできるってアンタが言ったんじゃないか。」

「で、生きていた。と」
「そういうことですよん、アネさん」
「心配かけさせて・・・行くぞ」
「了解っ」

船長は胸の氷の槍を力任せに引き抜く。
そして私たちに向かい、睨みつけてきた。

「もう乾きがどうこうではない!殺し合いだ、覚悟を決めろ!」

船長は今までに無い速さで近づき、剣を振るう。
狙いは私、短剣で受けるには速すぎる!

「ウィンドバイン!」

アイツが地面に強風を叩きつける。
船長と私達の間に起きた強風は3人を吹き飛ばし間合いを作る。

そのときアイツが合図のようにウィンクをしてきた。
それが何を意味するかは、私には分かりきっていたことだ。

「さぁさぁ船長さんよぉ、さっきのリベンジマッチといこうじゃないか」
「私が本気になれば君など造作も無いのだよ」
「あれ?俺さっき本気だって言ったっけ?」

アイツの振りかざす手が煌めいた。
そしていつものようにアイスランスを打ち出す・・・
その速度が早い。

「クイックスペル。船長、アンタ終わったぜ」

手で円を描くように回す。
一周した・・・その直後、宙に魔方陣が現れアイスランスが数十発も放たれた。

船長はギリギリのところで避けたり切り裂いたりしている。
こちらもグズグズしていられないようだ。

氷の槍が数多く撃ち出されて船長も疲れが見えてきたころ・・・

「頭上も注意だぜ、アイシクルレイン!」

真正面から放たれる氷の槍と頭上から落ちてくる氷の柱。

「どこからそんな魔力が・・・!」
「アネさんのおかげだよ」

私は遠くからアイツに向かってネイトマナをおくっていた。

船長は私の方に向かい走ってくる。

「そういえば・・・」
「余計なことを!」
「私の本気見せてないわね」

船長の足が止まる。
足元を見てみると淡い光で蜘蛛の糸のような形をした魔法陣が張られていた。

「スパイダーウェブ、狙った獲物は逃さない。でしょう?」
「真似するんじゃねぇよ」

私の後ろから男が飛び出る。
目にも止まらない速さで船長の背後に回りこみ、短剣で全身の骨を砕ききってしまった。

「ここ・・・までか・・・」

少し残った頭蓋骨の欠片から聞こえたその声は二度と聞こえなかった。