アスガルド物語2〜サラセン会戦〜その6


戦場で対峙する二人のカプリコ。

互いにカプリコ三騎士と称えられたカプリコ族の英雄。

 
黒のエイアグ。

赤のアジェトロ。

 
手傷を負いうずくまるガイエルが声をかける。

 
「気をつけろエイアグ。そいつの槍捌きは並じゃねえ。グッ!」

傷を押さえ苦悶の表情をうかべる。

 
「休んでいろ…」

 
「ありがたいね、そうさせてもらうぜ。」

 
「友との別れはすまれたかな?卿とは一度、槍を交えたいと思っていた。

まさかこれ程早く我が願いがかなうとは。」

 
「それは、こちらも同じこと…」腰を深く落とし剣を構える。

 
「フッ参られよ。」槍を構えるアジェトロ。

 
「降りぬのか…蛙から…」

 
「卿ごときの実力で私を同じ地に立たすつもりか?

ここで充分だ。こぬのならばこちらから行くぞ!我が雷光の槍をうけよ!」

 
エイアグに向かい駆けてくる。

大地を蹴り宙に舞うエイアグ。

 
「な、なんと!」驚くアジェトロ。

 
「馬上の不利を知れ…」空中でルナスラッシュを連発!!

 
シュィィィィィン!

 
無数の真空刃が滝のように降り注ぎザストを輪切りにした。

 
「飛翔月刃時雨れ[ひしょうげっぱしぐれ]…」着地し振り返るエイアグ。

 
「エイアグの野郎、あんな大技隠してやがったのか。」

 
「ド、ドロシー。」ザストの傍らにうずくまるアジェトロ。が、その体にはかすり傷ひとつなかった。

 
「あの斬撃をかわしたのか!?」ガイエルは驚きを隠せなかった。

 
「罪無き我が愛馬を手に掛けるとは、許せぬ!神に祈れエイアグ!!」

 
一気に間合いを詰めるアジェトロ。踏み込む足が轟音をたてる!

 
「受けよ!正義の鉄槌!!ドラゴンブレイク!!!」渾身の突きを放つ。

 
剣の腹で槍を受けるエイアグ。

 
ズガガガガガッ!!

 
凄まじい速さで寸分の狂いもなく突きを一点に連発する。

 
「まずいぞエイアグ!離れろー!!」ガイエルは力の限り叫んだ。

 
グワキャーーン!!

 
砕ける大剣。胸を突かれ吹き飛ぶエイアグ。

 
「エイアグーーー!!」

 

 

 

 

 
その頃、リコは部隊の再編を終え第六騎士団と合流するべく兵を動かしていた。

 
「間に合うといいんだけど、ガイエルさん無茶するからなぁ。」

 
「大丈夫ですぞリコ殿。なんといってもエイアグ様が付いているんじゃ。

エイアグ様を倒せる者なぞ、この世におりませぬ。」誇らしげに胸を張るロド。

 
「あはは、そうだね。ロドはエイアグさんが好きなんだね。」

 
「わ、わ、わしはただ…」珍しく舌が縺れる。

 
「でも敵には同じカプリコの三騎士がいるんでしょ?強敵じゃないかな。」

 
「う〜。」ロドは言葉に詰まった。

 

 

 

 

 
砕けた大剣を構えエイアグは立ち上がった。

 
「浅かったか。おとなしく寝ていればいいものを。」再び槍を構える。

 
「もはや卿を守る盾はない。この一撃で全ては終わる。」

 
「逃げろエイアグ!」ガイエルが叫ぶ。

 
「退かぬ…」

 
「よく言った!だが終わりだ!天に滅っせよ!!」ドラゴンブレイクを放つ!

 
「終わるのは…」

アジェトロの必殺の突きをかわし、凄まじい速さで体を右に回転させる。

 
「うぬのほうだ!…」

大剣の柄がアジェトロのこめかみを捉えた。

 
兜が砕け散り、弾け飛ぶアジェトロ。

 
「秘剣…巻き燕…」エイアグは呟いた。