アスガルド物語〜序章〜その1


エイアグと人間の戦いをロドはこっそり見ていた。

「さすがエイアグ様じゃ〜魔術師めを一瞬で倒されたわ。」

爆発によってできた窪みの中で観戦するロド。

特等席じゃ。

「それ、いけ!そこじゃ〜!」興奮のあまり我を忘れ叫びまくる。

不意に視界が遮られ、顔に激痛が走った。

「ぐぎゃ」その拍子に足を滑らし、窪みの中心に転げ落ちていく。

「ほげげげ〜」

ロドのかたわらには薄汚れたパウチが落ちていた。

「おのれか〜このわしを攻撃したのは!」

「こうしてくれるわ!」杖を振り上げ、渾身の力でパウチに叩きつけた。

「こうだ!こうだ!」

バキッ

乾いた音。木の割れるような。

「なんじゃ?」パウチを手に取るロド。

パウチの中には、数枚の肉。

「なかなか、うまいの〜」むしゃむしゃ。

パンのかけら。

「ぺっぺっ、なんじゃこれは」

2つに割れた小さな木彫りの人形。

「ん〜?」(小さな木彫りの人形)

「こ、これはー!?」
マスターの言葉を思い出す。

(取り戻して下さい)

「わしの手柄じゃ〜!じゃが…われとる。わしがやったのか?
いや、わしじゃない!最初から割れとったんじゃ〜!たぶん…
と、とにかく砦に戻らねば。」

あわてふためき、砦へと駆けていく。

窪みには破れたパウチと、使い古したロドの杖が
寂しそうにころがっていた。