アスガルド物語〜序章〜その6


麗春がカプリコ砦に着いた時、そこは肉の焼け焦げる臭いで充満していた。

「ひどいな、これは。」おもわずむせる。

麗春はカプリコが好きではなかったが、この惨状をみると同情を禁じ得ない。

目を凝らすと、死体から立ち昇る煙の向うに人影がみえた。
少し近づくと、服装から高レベルの魔術師とわかる。

「やつらの仕業か。」物陰から、そっと様子を見守る。

どうやら戦利品を分けているようだ。
リーダーと思われる金髪の男がしきっていた。

が、その瞬間、金髪が赤く染まる。横にいた男の体が真っ二つにさけた。

「!?」目を疑う麗春。いや、彼らの方が目を疑っただろう。
そこには、ここにいるはずのないカプリコの三騎士、エイアグがいたのだ。

髪を血で染めながらも、リーダー格の男はとっさに後ろへ飛び退いた。

いい判断だ。
その位置なら奴が振り返るまで攻撃を受けない。麗春も戦いに加わるべく飛び出した。

が、金髪の男はすでに絶命していた。
エイアグは大剣を逆手に持ち、振り返らずに男を刺したのだ。

「もう1人いたか…」深い声が響いた。

出るのが早かったか。今さら言っても仕方がない。2対1だ。
やりようによってはなんとか…1対1か…

最後の1人の首が宙を舞った。