アスガルド物語〜序章〜その3


不意に光が射し込む。

やっとついたか。

心で思っても口には出さない。特にこの男の前では。

目の前に1人の男が背を向けて立っていた。
このテラスからはルアスの町が一望できる。

また、よからぬことを考えているのか。
それとも平民の暮らしをほくそえんでいるのか。

「遅かったな、麗春。」男が振り向く。

透き通るような白髪に白の胴着。手には白扇。
黒髪に黒いコートの麗春とは正反対のいでたち。

だが、顔のつくりは同じだった。赤い目まで…

「麗鳳、わざわざ呼び出して何のようだ。」

彼は寛麗鳳。麗春の双子の兄にして、帝国の最年少元帥である。

知略にたけ、異民族との戦を勝利に導いたが、
その冷徹な采配が容姿、年齢とあいまって、軍の内部にも敵が多い。

「仕事の依頼だ、トレジャーハンター。」
「ほ〜、で内容は?元帥殿」

麗鳳の顔が微かにひきつる。
が、なにもなかったように元に戻り何かを手渡した。

「これは?」

それは小さな木彫りの人形だった。おそらく異民族の物だろう。
どことなく愛着を覚える顔をしていた。

人形の台座に何らかの文字が…

「!?」