第二章:「出会い」


ルアスを旅立ってから数ヶ月。

何度かしつこく追ってくるギルドの追手を上手く撒きながら、
宛てのない気ままな旅を続けていた。

ここは・・・おそらく位置的にはスオミの街近くなのだろう。

スオミには魔法学校があるという。

時折、魔術師の見習いらしき人々が、
魔法の練習なのだろうか、森にいるモンスターを相手に
覚えたての魔法を放っているのを見かける。

なんとなく神秘的な森と、広大な湖。

それらからもスオミという魔法の街をイメージさせた。


このままスオミに寄ってみるのもいいか・・・

俺は湖に流れ着くであろう小川を見つけ、
そこで顔を洗ってから再び歩き始めた。


しばらく行くと、遠くの方で人の気配がした。

別に変わった事でもない。

特に気にせず歩いていると、
先ほどの気配の持ち主から悲鳴が聞こえた。

その悲鳴から、それが女である事を想像させる。

・・・なんだ?この辺りのモンスターも相手にできないんじゃ、
相当なおちこぼれ魔術師なのか?

嘲笑を含めた笑いを飲み込み、
とりあえずその場へ向かった。


そこにいたのは魔術師ではなかった。
その外見からして、
噂に聞くミルレスの修道士であった。

修道士は己の修行の為、
各地を転々とすると聞いた事がある。
だがこの辺りのモンスターに、
まさか苦戦する事はないだろう・・・

しかし、その修道士が相手にしていたモンスターは、
明らかに周りのモンスターとは違う姿形をしていた。

一際大きい赤い体を物ともせず、
異形な翼で空を飛んでいる・・・

「テズモかっ!?・・・」

思わず声に出してしまった。

時々、本当に珍しい事なのだが、
異空間より、モンスターが何らかの作用で
召還される事があるという。

これもその結果なのだろう。

テズモが相手となれば・・・先程の悲鳴にも納得がいく。

いや、それ以前に今こうして目の当たりにしている光景が、
その修道士の苦戦を物語っていた。

「くっ・・・」

俺は思わずテズモに向かって、
懐から取り出した毒爆弾を投げつけた。

一瞬テズモはそれに気をとられ、続く毒の作用で、
目の前の修道士から完全に気がそれた。

その時だった。
「コークスクリューパンチ!!」

ふいをついて修道士が繰り出した拳に、
テズモはあえなく崩れ落ちた。

「あ、ありがとです」

「いえ。・・・では」

俺はそう言い残して去ろうとした。
元から助けるつもりで来たのではない。
礼を言われる事にも慣れていなかった。

だが、俺を引き止める声がする。

「あの、スオミってどっちですか?・・・迷っちゃって・・・」

断る理由もなかったので、
スオミまでの道を供にする事にした。


ニミュ湖の碧が日の光によって
一層青みがかっているように見えた。