第五章:「回想」


あの日、僕は師匠といつもの魔法の修行で森へ行っていたんだ。

 だが、突然村の方角が何故か騒がしい。
 師匠と共に村に戻ると、カプリコの軍勢が村を襲っていた。

 師匠と僕は、迷わず村の人達を助ける為、
 魔法で応戦したんだ。

 あの頃の僕は足手まといにしかならなかったけど、
 師匠は片っ端からカプリコを撃破していったんだ。

 だけどね・・・

 多勢に無勢。

 明らかに押されているのは明白だった。

 村人達も武器を取って必死に抵抗したよ。

 ただ一つの望みを胸に。

 ・・・ルアス騎士団の到着。

 騎士団が来るまでなんとか持ちこたえれば、ってね。

 でも、なかなか騎士団は来なかった。

 なんでだと思う?

 ただ間に合わなかっただけなら分からないでもない。

 ・・・わざと出発を遅らせていたんだよ。
 
 カプリコが村を襲い、その被害が大きければ大きい程、
 仕返しの口実は確実なものになる。

 実際、騎士団へはかなり早い段階で知らせが行っていたはずなんだ。

 下級の傭兵団の君が知らせを受けてすぐに駆けつけたって、
 騎士団より早く着けるはずもないだろう?

 今では・・・カプリコの襲撃も、
 人間側が仕組んだ事なんじゃないかって思ってる。

 
 それで・・・最後まで師匠と村の人達は
 騎士団の到着を信じて戦った。

 来るはずのない騎士団をね。

 まさに激戦だったよ。

 その後はあんまり覚えていないんだ。

 ただ、師匠が僕の目の前で死んだ事、
 死に際に、僕に一つの言葉を残していった事以外は。

 『覚醒しろ、お前ならできる』ってね。

 何の事か分からなかった。

 そして・・・

 後は君の知っている通りだ。

 後に残ったのは何もない。ただ一つ僕だけ。

 そう。あれは全部僕がやった事なんだ。

 君も調べたんだろ?禁じられた魔法の事。

 なんで僕が使えるのかは分からないけど、
 でもそのおかげで僕のやるべき事が見つかった。


 いつまでも汚い争いを繰り返すこの世界をもう一度創り変えるんだ。

 そして人間はこの力を持ってして完璧な存在になる。

 新しい、平和な世界と共にね。


 その為にここスオミダンジョン最下層に流れる水が必要なのさ。

 これを媒体として・・・・・・・

 おっと。ここから先はもう君には関係のない話だ。

 分かったろう?
 いかに今の人間達が汚い存在かを。