第四章:「友を追って」


スオミから東に位置するのは、通称スオミダンジョン。

幾多の魔物が潜み、トレジャーハンター達の
格好のポイントとなっている。

図書館で会った老人の話しによれば、
その若者が訪れたのは数日前の事だという。

もしこのダンジョンに来ているならば、まだ中にいるはずだ。



「ここに・・・いるのか?・・・ルゥ」


世界にいくつかあるダンジョンの中でも、
ここは特にその深さでは類を見ない。

最下層まで行くだけでも丸一日以上を要する。
それ相応の準備なしではとてもじゃないが
奥深くまで潜る事などできはしなかった。

そして、それ相応の腕の自信もなければ。



日の光を見なくなってどれくらいが経っただろう。
すでに何階下ったかも忘れてしまっていた。

向かってくる敵を薙ぎ払い、ひたすら先へ進む。

奥へ進めば進むほど出てくる魔物は強力さを増してくる。

「・・・ここいらで少し休憩するか・・・」

辺りの岩に腰を下ろす。

と、その時背後で何かが蠢く気配がした。

「ちっ・・・休ませてはくれないか!」

アシュトーは素早く剣を鞘から抜き、
その気配に向かって剣を突きつける。

断末魔の叫びと共に、闇の中からモンスターが姿を現した。

「アズモか・・・」

再び剣を鞘に戻す。

だが、気配がまだ消えていない事に気がついた。

「!?・・・こいつだけじゃない?」

その時、突然背中に痛みを感じた。
いや、痛みというより熱さである。

「ぐっ!・・・なんだっ!?」

辺りを見回しても敵らしき姿がない。

いや・・・闇に目を凝らすと、数匹の魔物が微かに見えた。

「囲まれていたかっ!くそっ!」

アシュトーは素早い身の動きでその魔物目掛けて跳躍し、
剣を振りかざした。

その瞬間先ほどの熱を伴った衝撃がまた走る。

だが、今度は一度じゃなく連続であった。

「ぐはっ!」

アシュトーはその場へ倒れこむ。

闇の中から魔物が姿を現した。

「ジョンキか・・・それも1、2、3・・・・6匹・・・」

ジョンキの群れはアシュトーを取り囲むようにして、
様子を見ている。

アシュトーはグッと剣の柄を握りしめると、
さっと立ち上がりざま一匹のジョンキ向かって走り出した。

素早く剣を振り下ろす。

不意をつかれたのかそのジョンキは奇声を上げて
崩れ落ちた。

だが、その時一斉に他のジョンキから先ほどの熱弾が
アシュトー目掛けて放たれた。

「くっ!・・・」

避ける事もできない。
覚悟を決めて受け止めた・・・はずだった。


気がつくとそこにジョンキ達の姿はなかった。
自分も傷を負ってはいない。

「?・・・これは・・・」

辺りを見回すと、先ほどいた場所の風景とは違っていた。
魔物の気配はなく、静まり返り、
ただ、どこかで水の流れる音だけが小さく響いていた。

「ここは・・・一体・・・」

「ここはスオミダンジョンの最下層。
 久しぶりだね、アシュトー」

ふと声の方を振り向くと、そこにはいた。
ずっと探し続けていた友、ルゥが。

「ルゥ!!」

「ふふ。これも失われし魔法の一つさ。
 遠くの物を一瞬で呼び寄せる。」

ルゥはアシュトーの方にゆっくりと歩いてきた。
以前とは少しだけ感じが変わっている。
まだ幼い頃の面影は残っていたが。

「ルゥ!一体なんで突然消えたりしたんだ!?」

「・・・僕にはあの時全て無くなってしまった。
 自分の力によってね。
 だけど、その代わりにやるべき事を見つけたんだ」

「やるべき事?・・・
 あの時、お前は一体何をしたんだ?・・・」

「そうだね。君には知る権利がある」

「・・・・・・」

そしてルゥはゆっくりと語り始めた。

「あの日・・・・・・」