第三章:「古の呪法」 アシュトーとルゥの二人はノルア村壊滅の犯人とされたが、 結局証拠不十分で釈放され、 アシュトーは元の傭兵隊に戻った。 そして、しばらくはルアスにいたルゥはいつの間にか アシュトーにも何も告げず忽然と姿を消していた。 その後、あとを追うようにルアスからアシュトーの姿も なくなっていた。 「ルゥ・・・一体お前は何をしたんだ・・・」 アシュトーの頭からずっと離れる事のない疑問。 突然消えたルゥを追い、 宛てもなくただ友を探す旅に出た。 様々な街を渡り歩き、 辿り着いた先、魔法都市スオミ。 ルアスを出てからすでに1年が過ぎようとしていた。 ここは魔術師達が住む都である。 ルゥの故郷でもあった。 何か得る物はないかと、情報を求めて町を散策する。 ふと魔法図書館なる建物の前に出た。 「魔法・・・図書館?・・・」 あの時聞こえた爆発音。そして残されたルゥ。 あれがもし魔法によるものだとしたら・・・ しかし今まで見た事も聞いた事もない規模の爆発であった。 アシュトーは図書館で魔法について 調べてみる事にした。 古代メント文明によって創られし魔法 主に4種の精霊の力を媒体とし、無から有を生み出す 現在扱われる魔法は 火―――ファイアアロー、ファイアボール・・・・・・・ ・・・・・・ 「どれも聞いた事はある物ばかりだ・・・ あの規模の爆発を起こせる魔法なんてあるのか?・・・」 パラパラと本を捲って閉じる。 本棚に本を戻そうとしたその時、 背後から声がした。 「お若いの、何をお探しかな?」 ふと後ろを見ると、一人の老人が立っていた。 察するに、この図書館の関係者であろう。 「魔法について・・・ちょっと」 本を戻し、その老人の方を向く。 「お爺さんも魔術師なんですか?」 一見、その風貌はどこにでもいる普通の老人である。 だが、スオミに住む者は すべからく魔術師であるという事実から その老人も魔術師であろう、 という事が予想される。 「うむ。これでも昔はルアスの王宮魔道士じゃったのだよ。」 「ルアスの・・・・へぇ・・・」 「それで、何を探しておるんじゃ?」 「・・・爆発を起こせる魔法というのはあるんですか? それも・・・村一つを消滅させるほどの・・・」 「爆発とな。ふむ・・・ 魔法は火、水、風、土の4つの属性で構成されているのは 知っておるな?」 「はい」 「爆発というのは火属性に近いようだが、 火ではない。かといって風でも土でも水でもない」 「・・・というと?」 「無じゃよ」 「無?」 「現存する無属性魔法の一つに、『メテオ』という魔法がある。 だが、そのメテオは隕石を降らせる最上級高等魔法でな。 爆発を起こす物ではない」 「ではそんな魔法は存在しない、と?・・・」 「うむ。今は、な」 「今?・・・という事は昔はあったのですか?」 「・・・今はなき禁じられた呪法の一つに、 『エクスプロージョン』という 魔法がある・・・」 「エクスプロージョン・・・禁じられた呪法?」 「うむ。その余りの強大さにいつからか 使う事を禁止したのじゃ。 最も・・・扱える魔力を持つ者など この世にはおらんがな」 「・・・もしその魔力を持つ者がいたとしたら?」 「普通の人間ではその魔力に 精神が取り込まれてしまうじゃろう。 それ程強大で危険な魔法なのじゃ」 「分かりました・・・ありがとうございます」 「実はな・・・同じ事を聞きに来た若者がおってな」 「!?・・・ルゥ、ルゥと言っていませんでしたか!?」 「いや、名前までは知らん。 だが、東へ行くと言っておったな」 「東・・・そうですか・・・ありがとうございました」 アシュトーはその図書館を出、 ルゥと思われるその影を追い、 スオミから旅立った。 禁じられた呪法・・・ 何故ルゥがそれを扱えるのか分からないが、 そしてルゥは何をしようとしているのかも分からないが 何か胸騒ぎがする事だけは確かであった。
![]()
![]()