第二章:「襲撃」 アシュトーが己の夢を叶えるべく 単身ルアスに来て二カ月目の事であった。 騎士団に入る為にはまず、 戦士として己を磨かなければならない。 そこで騎士団直属の傭兵団に入隊する事になる。 元から血気盛んなアシュトーの性格と、 長年自己流で鍛えた剣の腕のおかげで、 周りからも一目置かれる存在となっていった。 ある日、アシュトーが仲間達と酒場で 互いの夢を語り合っていた時だった。 突然傭兵団の仲間の一人が息をあげて酒場に入ってきた。 「おい!大変だ!カプリコが攻めてきたらしいぞ!」 アシュトーを含めた戦士達が一斉にその声の方を向く。 「騎士団は今それで戦準備を進めている! アシュトー、たしかノルア出身だったな?」 「ノルアがどうした!?」 「カプリコのやつら、手始めにノルアを襲ってやがるらしい!」 「なんだって!?」 アシュトーはその話しを聞き、酒場を飛び出た。 もちろんそのままノルアに向かう事にした。 ルアスからノルアは2時間弱。 急げば1時間半ほどで着く距離である。 騎士団が準備を終えてノルアに向かったとしても、 おそらく3時間後くらいになるだろう。 一人で行ってどうにかなるものでもない。 だが、アシュトーはルアスに悠々といられるはずもなかった。 「くっ・・・村のみんな・・・ルゥ・・・無事でいてくれ・・・」 ノルアまでの道中、不安と恐怖が入り混じり、 時には絶望すら感じられた。 しかし村の事を思うと、自然と足は早くなった。 結局1時間足らずで村が見える位置まできた。 もうすぐでノルアに着く、その時だった。 村の方角からドーンという物凄い衝撃音が聞こえた。 「!?・・・なんだっ!?」 アシュトーが村に入ると、そこにあるはずの建物や木々、 あらゆる物が・・・なかった。 そこにいるはずのカプリコ達の姿もない・・・ 「これは・・・?」 ふと遠くの方に、佇む一つの影が見える。 近寄ってみると、見たことのある姿、ルゥだった。 「おい!ルゥ!大丈夫か!?」 背中を向けて立っているルゥに背後から話しかけると、 少し時間を置いて声が返ってきた。 「・・・アシュトーか・・・」 いつものルゥの声ではない、 ひどく疲れたようなそんな声だった。 「ルゥ、一体どういう事だ? カプリコ達は? いや、それ以前に村の皆・・・村は!?」 しばらくの静寂の後、再びルゥが口を開く。 「・・・僕だ・・・僕が全部・・・全て僕のせいだ・・・」 そう言うとルゥはその場に崩れ落ちた。 「・・・どういう事なんだ?・・・」 アシュトーはただ困惑するしかなかった。 目の前に置かれている状況が全く把握できない。 その後何を問おうとも、 ルゥは一切口を開こうとはしなかった。 ただただ微かな泣き声と、 時折嗚咽するような声が聞こえるだけだった・・・ それから数時間後、ルアス王宮騎士団が到着した。 アシュトーは、騎士団(といっても先遣隊数名)の団長に事情を話し、 自分も訳がわからない事を告げた。 アシュトーとルゥは、騎士団に連れられ、 一路ルアスに戻る事となった。
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