第四十四話〜決別〜



俺の名は闇、“深淵の闇”

全てを憎み、全てを壊し、全てに復讐する復讐者。

復讐こそ、俺の存在理由。

黒き我が眼に映りし全てに…死を、絶望なる破壊を…全てを灰燼へ。

我が恨み、晴らされしその時まで。




バーンッ!!

轟音とともに、木造のその建物の一角は弾けとんだ。
木っ端微塵にされた木片に硝子をまきちらし、粉塵を巻き起こす。

スルト、ミラ、リルムは部屋、いや元部屋があった場所から弾き飛ばされ、寝室の床へ叩きつけられた。
レヴンは衝撃からミレィを守るように動かぬ彼女を抱きしめ、元ベッドのあった場所に伏している。

部屋は彼女のベッドを中心にはじけとび、もうもうと粉塵が巻き起こる部屋の中心に一つの影。
彼らのほかに、何者かがそこにいる、確実に…!

「グッ…。お前は…?」

傷だらけの体を起こして、レヴンはその者をにらめ付けた。
徐々に夜風に散って視界が戻ってくる。まるでベールを脱ぎ去るようにその姿が月光の元に晒される。

「…俺?」

黒い長い髪、漆黒の法衣、そして黒い瞳。まさしくレヴン・クレイツァーそのもの。

しかし、その者の周りにはまるで靄がかかったように黒い闇が渦巻き、
強烈なプレッシャーと殺気をはなっている。

「いちち…。んっ!? レヴンが二人!?」

「ううん、みて!ミレィさんを抱いているほう。髪の毛が茶色に…」

 みんなにも見えているってことは今までのような幻じゃないな。

 しかし、俺がもう一人…? まさか!!

「手前、何をした! 深淵の闇! なぜお前が具現化している?」

『クリエイトマジックをもってすれば…体の複製などたやすい。』

「!? 手前まさか…俺の創造の力を…?!」

『全ての魔力は俺が貰い受けた。やはり主人格たるお前と俺は気が合わないようだからな、
これでいい、これで俺は自らの使命を遂行できる。』

淡々と闇は語る。

「使命? もうお前の役目は…ない。悲しみも迷いも躊躇も無い復讐者はもう。。。必要ない!」

交差しあう冷ややかな漆黒の瞳と、困惑にみちた茶色の瞳。

『フッ、もはや何も言うまい。今俺とお前の道は別れたのだ。決別だ。俺は俺が道を行く、さらばだ…』

スゥウウウ…足元から崩れるように闇の体が空気に溶け込んでゆく。

「まてっ! てめえ俺の魔力を…クリエイトマジックをかえせ! ミレィを…」

『…扱えもしないものが持つべき物ではない』

暗闇より闇の声が響く。

『それに、一つおしえといてやろう。
クリエイトマジックをもってしても彼女を癒せない。彼女自身がそれを拒んでいるのだから…」

「!? どういうことだ! 闇! 闇!?」

・・・しかし、もう返事は返ってこなかった…。夜の風がむなしくそれに答えるのみ。

「クソッ! くそおおおおおおおおおお!!」

月の綺麗なミルレスの町に悲痛なレヴンの叫び声が響き渡った。

…全ての魔力を、“創造の力”さえ失ったレヴン、
目覚めないミレィ、そして解き放たれた狂気“深淵の闇”

何ものにも属せず、ただ一人創造の力をもった破壊者が、この世界の勢力図にあらたに表れる。

愛ゆえに裏切ったティア。
まだ不完全ながらも、最凶の力を持つレクス、
そして神の策略により、またあらたにこのマイソシアに呼び込まれるものたち…

このものがたりも新たな章へ〜



“Next stage” 第一章 完