第二十六話〜森の中の出会い〜 雪がしきりに降り積もる白銀の森。 天を覆う厚い雲から途切れることなくシンシンとふりつづける白く淡い雪は 全てのものを白く綺麗に染めていく。 それは夜でも淡い光を放ち、闇の中でも引き立っていた。 そんななか、一箇所だけ強い光が漏れてくる場所があった。 「ヒャヒャヒャ」 炎の塊、フィアンマの高笑いが暗い森に響く。 「おい、そこの炎の化け物、お前何処からきたんや?」 紺と白の十字架のえがかれた法衣をきたクロスが、杖を構えて歩み出る。 「ヒャヒャヒャ、あんたたちには何もわかっていないね? ここがどこかさえも」 ニターッ、唇とおぼしき影の両側をつりあげ、意地悪そうな表情をするフィアンマ。 「ええ、わかってないわ。 おしえてほしいんだけど、、、フィアンマさん?」 私もいっぽ前に出て、それに歩み寄る。 見れば見るほど不思議な存在、どことなくうそ臭い雰囲気も漂うが… 彼に頼るしか今はないみたいね。 「よろしく頼むよ〜、カレワラの太陽様っ」 リルムが後ろからわざとらしいお世辞をいっている。 ボボボッ、その炎のかたまりが私たちにちかづいてきて、そのつりあがった目で覗き込んでくる。 あっつう、、顔がひりひりする。 「どうしても教えてほしいかい?」 からかうような口調。 「ええ、おねがい、、、します。」 「ん〜…やだね。 ヒャヒャヒャ〜」 その場で旋回し、空高く舞い上がる炎の塊。 ムカッ、私たちにいらつきの空気が漂うはじめる。 そしてついに... 「やい、炎の化け物。 教えなきゃその炎消してまうで?」 クロスが杖を突き出して、炎の化け物にむける。 「ヒャヒャジャ、何をするつもりだり? オイラをけそうなんて無理だよ〜」 なんと、舌のように炎を突き出してあっかんベーとまでしてくるじゃないか! 「ええい、もうワイは切れたで、“ファイアダウン”」 「あ、ばかやめろクロス」 ヘブンの制止もときすでに遅し。 炎の塊のうえに、巨大な蒼色の壷が具現化され… ドゴォォォォ!! 大量の水がそそがれる。 哀れ、一瞬で鎮火されてしまうかと思われたその時。 ピィイン 炎の塊の上に巨大なレンズ上の反射壁が現れ… ビシャアア!! 「つ、つめてっ。クシュン。」 「きゃー、最悪〜っ。」 「うわ、余計に寒くなって…」 なんと、水が五人の上に落ちてきて水浸しに。 「ヒャヒャヒャ、んなものオイラにきくわけないだろ、いいきみだな〜ヒャヒャヒャ」 まるで笑いこけるかのように空中を転がる火の玉、フィアンマ。 プチッ… 「…よかろう、俺が消してやる!」 さすがに冷静な彼も頭にきたのか、 背中の鞘から白いオーラをまとったファインフュージョナをとりだし、本気で構えるヘブン。 ゴォォォ、凄まじい殺気がはなたれる。 「あ、ヘブンが怒ってる…」 「うひゃ、こいつはやばい、オイラ消されちまうよ...レルシア、レルシアー!!」 急に大空高く舞い上がり上空から叫びまくる火の玉。 「逃がさん…!」 彼が手を掲げ、魔法を唱えようとしたときだった。 「もう! うるさいわね〜!」 突然、木の陰から少女が現れた。 薄い黄色のワンピースに、黒いベルト、そして袖にはかわいいヒラヒラな飾り。 そして腰まで流れるような流動的な金髪、どこか不思議な感じがする少女。 「ふぇ? あ、貴方たち…だれ?」 大きな青い瞳のめをさらに大きく開いて、ビックリする少女。 その後ろに隠れるように火の玉がもどってきて後ろにつく。 「レルシア〜、こいつらがオイラを虐めるんだっ。」 「なんでやねん!! あ、つい癖でつっこんでもうた。 ワイらは遭難してもうた旅人みたいなもんや」 クロスが、状況を説明する。 火の玉にたすけられたこと、けなされたこと、 それにおかげでびしょぬれになったこと、まぁこれはクロスのせいだが。 「あら、そうでしたか。 私はレルシアといいます、貴方たちは?」 彼女は状況を理解したようで、ニッコリと微笑みかけた。 「私はティア、よろしく。」 「うちはリルムやよ〜」 「ワイはクロス、以後お見知りおきを、かわいい嬢ちゃん。」 「ぼ、僕はシリウスです、よろしくっ。」 「...ヘブンだ。」 「それにしても何故この“白銀の森”へ? 」 彼女は周りを見回しながら不思議そうにたずねた。 「ええ、それが・・・」 「ゲートの空間が閉じられているようだ、なぜかここへ飛ばされた。」 私よりも早くヘブンが答えていた。 「それは災難でしたね、ここは私たち魔女でも入らぬ森です。」 「「「えええ??」」」 五人の声が重なる。 「レルシア、貴方は魔女なの…?」 私は驚きを隠せなかった。 魔女なんてスクールの教科書程度でしか知らない存在だったから。 「ええ、カレワラの魔女の民ですよ〜、 とりあえず皆さんを町へ招待します、このままでは凍死してしまいますよ〜」 彼女は私たちの驚きようにすこし笑いながら、森の奥へ歩き出した。フィアンマもそれに続く。 「俺たちも行こう」 私たちもその跡を追って進んで行く、するといかほどもいかないうちに、 フッ、と彼女が消えた、木と木の間でである。 「?! きえた…」 「お〜い、レルシアちゃ〜ん??」 私たちは周りを見回すも、彼女の姿はない。 ただ白い木々の林に声がむなしく響いている。 「あ、すみません。」 突然、彼女の声が下方向に振り向くと、なんと彼女が上半身だけで浮かんでいるではないか! 下半身と背後はかわりない雪山の風景を写しながら、上半身だけ黄色い服をきた彼女が浮かんでいた。 「ここ、結界がはられているんですぅ。 ここから入ればはいれますので、どうぞ。」 「はやくこいよお間抜けさん。 ヒャヒャヒャ」 声が遠ざかっていく。 「・・・さすがは魔女の村、巧妙なものだ。」 これはしてやられた、ヘブンは髪を手で掻きながらその中へ入っていった。 私たちもその中に続く。
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