I WISH ・・・6 〜賭け〜


レヴンには戦士の振り下ろした剣が、まるでコマ送りのようにゆっくりと見えていた。

 こんなところで、俺は死ぬのか・・・?
      「また」俺は誰も守れないのか…?

 キンッ!! 高い金属音が響いた。

戦士は剣を確実に彼の首へ振り落とそうとしていた。

が、彼の背中にくくり付けられていた大剣が、
さやからずりおちて戦士の剣とぶつかった。

 ! セルティアル・・・そうか、力を貸すというのか。

彼は渾身の力を振り絞り、足の力のみで大きく跳び、戦士の間合いの外に出る。

「運のいいやつだ。だが次はない、お前が死ぬという運命はかわらん」

 フン。運命だと? 神は俺に「力」を授け、戦い続ける運命を背負わせた。

  俺が死ねるのやはり戦いの中でしかない・・・ いずれくるだろう、その時は。

   だが、今は命をとしててでも、「仲間」を守る!

「俺の命を吸い尽くしてでもいい。力を貸せ、セルティアル!」
大剣を握る両手から、急激に力が吸い取られていくのがわかる。

それに比例するように、刀身は青白い光に包まれ、研ぎ澄まされていく!

その光景を、驚きながら二人の「悪党」はみていた。

それと同時に彼は何かの魔法を唱え、ミレィとスルトを光の障壁がつつみこむ。

彼がその光り輝く大剣をよこに構え、いっきに振りぬく。

 −衝波!!

 ゴォォォォォォ! 

地を這うような衝撃波の波が、ものすごい爆音を撒き散らしながら向かっていく。

二人は衝撃波にのまれ、はるか後方へと吹っ飛ばされた

「グハッ、な、なんだこれは。」

あたり一面の木や岩が根こそぎ吹っ飛ばされ、
あたり一面は海岸のサラサラした砂が広がるのみである。

「どうなっている…あの小僧。ここまでの力を隠し持っていたとは…」
利き腕が折れ、左手で剣を構えながら戦士が立ち上がる。

 レヴンは起き上がる二人の姿を確認する。

「今ので死んでおけば楽だったものを・・・」
凍てつくような残酷な笑みをうかべ、彼は語りかける。

「グッ、、、半死半生なくせに…死ねェェェ!」
修道士が満身創痍ながらもすごい速さでかけてくる。

レヴンは眼に見えるほどの莫大で、邪悪な魔力を放出しはじめる。

 深淵の底へと沈め! 

魔導剣術ー大魔法 コーリング・オブ・ザ・デット・・・(死者の招き)

一段と光を発する大剣を彼は地面に突き刺した。
そこから「闇」が四方八方へすごい速さで広がっていく!

闇に覆われた地面から、黒い腕が無数に立ち上がる。
それは闇の底から死霊がいきし者を呼んでいるような・・・

修道士の足も捕らえられ、後ろのほうで戦士も、
絡まれながらも迫り来る腕を、剣で切り落としながら格闘している。

「な、何なんだよこの気味の悪い腕は!」

手といわず、足といわず腕は掴み掛かり、下へとひっぱっていく。
二人とも手にとらわれ、身を動かすこともできない。

「くそぉぉぉぉ!!」

ゆっくりと闇に覆われた地面へ沈み始めた。

それは木も、花も そして二人も。
すべての生あるものを掴んで引きずり込んでいく・・・
そう、深淵の底へと・・・

 死霊に嬲られながら、永遠に闇を彷徨うがいい…二人の魂よ・・・

 バタッ 

二人が闇の底へ沈むのを見届けた後、レヴンはその場に倒れた。

剣は急速にその輝きを失い、
闇が晴れたその場所には、ただただ砂浜と無機質な岩が転がるだけだった。

ミレィとスルトを包む光の障壁のみをのぞいて…

「レヴン!!」
ミレィとミレィの回復魔法により、何とか動けるようになったスルトが駆けつける。

ミレィが癒しの魔法をかけてみるも、ゆすってみるも彼はぴくりともしない。
ただ、かすかな呼吸の音だけが聞こえる。

「これは…はやくかえって師匠に。 急ごう!」
スルトは彼を背負い、駆け出した。ミレィがその後ろを懸命に追う。

「レヴンは私たちを助けてくれた・・・絶対死なせないんだから」
二人はルケシオンの浜辺を全速力でかけていく。

 また、ここか。

レヴンはまた闇の底へたっていた。

─馬鹿だね、なんでまたあの力を使おうとするの?

びっくりしてレヴンは後ろを振り返る。

そこで。。。彼は思いがけないものを見る。