I WISH ・・・31 〜岩の心臓〜


果てしなく暗い。
まさに真の闇だろう、その中に一つ、紅い淡い光がみえる。

リヴァルスの持つ、
魔法槍“サラマンダラ”を取り巻く光が、ゴーレムの内部を照らしている。

中は大きな空洞になっているようだ。

足元には表皮と同じく、土と砂利の感覚がある。

そしてその土が足元でうごめいているような・・・気味の悪い感覚も。

「団長・・・何処まで続くんでしょう?」

「そんなもの俺に聞くな、とりあえず目指すのは中心だ。」

「お、あれは・・・」

おぼろげに見える視界に、今大きな崖が飛び込んできた。

これを上らなければ上にはいけないようだ。

「ち・・・仕方がないな・・・、おい、のぼるぞ!」

そういって、少し蠢いている崖に手をかけて上り始めた。

何十メーターもある壁を騎士が一列になってのぼっていく・・・。

「おい! いつまでトロトロのぼってんだよ!」

団長リヴァルス他、6人は上りついたが、一人がまだ中間でとろとろしている。

いや、彼にとっては必死でやってるつもりなのだが・・・

だが、その鈍足さが命取りになる!

ズガガガガガ!!

急に何か巨大なものが動き出したような音が、空洞なゴーレムの体内に響く。

「おい! うしろ、いそげぇぇぇ!!」

なんと、崖の後ろの壁が下のほうから崖に押しついてきている。

ものすごい轟音をたてながら、岩と岩がぶつかり合う音が響く。

「うわぁぁぁ」 グチャ・・・ズドドドドドド!!

「くっ・・・諦めろ、追いつかれる前に走れ!」

そのすなの津波はしつように逃げる騎士団のうしろをおってくる。

いや、それだけではない、両側の壁からも・・・

 ズドッ!!

「う・・・」
一人の騎士が横の壁から飛び出してきた無数の岩の突起に貫かれた。

「ぐっ! 横からもかよ!」
槍で側面から来る岩を砕きながら、それでも騎士団は走り続ける。

たった一つ、“核”をめざして。

ドゴォォォォ!!

体内が震える。

 これは・・・また魔砲か・・・、急がないとやばい・・・!


 バリバリバババババ!!

神聖なる壁と、邪悪なる魔砲のエネルギーが拮抗しあう。

そのレーザーがあたっているところは激しい光をはなち、突風と稲妻が渦を巻く!

今度は魔砲がおしぎみである・・・

「ふんばれ、突き破られるぞ!!」
必死に力を振り絞るも、もう聖職者たちの力は空に近い・・・

 やばい・・・このままでは・・・

気がつけば、レヴンの周りの聖職者達の中には地面に倒れているものも大勢いる。

もうこれ以上防げそうにもない・・・

「うぉおおお!!」
残された魔力を振り絞り、レヴンは風をまとって宙へ跳ぶ。

そして、邪悪な魔力と聖なる壁がきっこうし、
凄まじいエネルギーの余波がもれているところまでいった。

「いけ、バムルンクよ、邪悪なる砲撃をなぎ払え!!」

彼は空中で縦に思いっきり“還す剣”バムルンクを振りぬいた。

ズガガガガガ!!

敵のビーム砲が中央から割れていく!

そして弱くなり消えていった・・・。

還す力は魔法をも切り裂く。

 ストッ

彼は地面におりたち、ひざを突いた。
肩で荒い息をしているところへ、同じくよろよろしながらもミレィがやってきた。

「ハァ、ハァ・・・、これが俺達の限界か・・・次はないな・・・」

「うん・・・ スルト達騎士団さん、がんばって・・・」


「うぉぉぉ!!、ブラストアッシュ!!」

ズガガガガ!! 岩の砕け散る音が響く。

先ほどから、騎士団にも集中攻撃が続いている。
四方八方、さらに上下から厳しい攻撃が続く。

「スルト! のこったやつは?」

「いえ・・・もう、僕達二人だけです・・・」

「ち・・・このくそやろぉぉぉ!!」

二人は八方より近寄る岩の突起を延々と砕いていた。

 ボキッ!!

リヴァルスの武器、
ドロイカンランスがついに悲鳴をあげ、真ん中から砕け散った。

その反動で大きく吹っ飛ばされ、岩の突起に弾かれた。

このままでは彼も岩の槍に串刺しに…

バリン!!

突然、背中にっさるはずだった岩の槍がくだけちる。
彼に背負われたサラマンドラが炎のバリアをはって彼を守った。

「ふん、サラマンドラか・・・こいつの出番のようだな。」
彼はそれを腕にもち、地面に思いっきり叩きつける。

“ハボックショック!!”

ドゴゴゴゴゴゴ!!!
槍の刺さったところを中心に、
地面が高熱で溶かされドロドロになっていき、
向かっていた岩のとっきは昇華して蒸発していく!

「うぉおお!!」

彼とスルトは、そのあまりにも強大な力で、
足元にあいてしまった暗黒の穴へ落ちていった。

ドスン!
岩の上に落下したようだ。

「いてて・・・大丈夫ですが団長!」

「ふん、無論だ・・・」

マントについたほこりを払いながら立ち上がり、その炎の槍を前方にかざしてみた。

淡い光の中に、それは浮かび上がる。

人の背丈ほどの岩の塊。

それは生物の心臓のように、岩の管が何本もそこからでていて、そして動いている。

いや、それは伸縮を繰り返しながら鼓動している!

「・・・みつけたぜ! これが“核”か・・・、ぶち壊す!」

サラマンドラの切っ先が今、岩の心臓に向けられる。