I WISH ・・・1 〜深淵の闇〜


今は昔、マイソシア大陸に今で言うメント文明が栄えていた時代・・・

闇夜の王宮を、一人の男が風のように走っていた。

漆黒の鎧、黒いマントを身に纏い、闇に溶け込むような黒い長髪、
そして身の丈はありそうな大剣の鞘を、背中でクロスさせるようにして背負っている。
                
名をレヴン・クレイツァー、いや、深淵の闇とよばれ、
この時代のマイソシア大陸で、もっとも恐れられた男である。

彼を前にすれば、一軍隊であろうと、
強力な魔物の群れであろうと、一瞬で壊滅に追いやられる。

今、彼の目の前には、
10メートルはあるとおもわれる、魔力を帯びた巨大な扉が遮っている。

王の発する魔法により開閉するそれは、
魔物の大軍が攻めようとびくともしないだろう。

彼はその豪華な彫刻のされた扉に触れようと、ゆっくりと右手を上げた・・・が

バチッ! 

と扉に触れる前に、その魔力の障壁に、右手ははねかえされてしまった。

「フン、さすがに王宮か、、、小賢しい仕掛けだらけだな。
だが、この程度じゃ。。。無意味だ。」

彼は背負っていた二つの大剣を鞘から開放する。。。

右手には青白く光を放つ諸刃の大剣―セルティアルとよばれる剣を。

左手には黒い片刃、赤黒いオーラをはなつ大剣―ベルセルクを。

「くだけちれ、、、双破!!」

軽く5メートルほど飛び上がり、
右手はよこに払うように、左手は上から打ち下ろすように高速で繰り出す。

剣のオーラが障壁に触れた瞬間、ものすごい爆音と閃光がおきた。

障壁とともに鋼鉄の扉は吹っ飛び、昇華して夜の大気へと混じっていった。。。

彼はまた走り出す、そう、彼の狙いは・・・

長い大廊下の突き当たり、そこにまた扉がある、、、そう、王の間へと続く扉が。

近づくと、扉は魔力により自動的に開く、、、
暗闇のみが支配する戴冠の間、王宮で一番大きな部屋である。

彼は速度を緩め、スッとはいりこんだ。

「やれやれ、ほんとに来てしまいましたか」
「貴様がここに忍び込むことは読めてましたよ、、、私の魔力は未来を読むこと」
「あなたは殺しすぎる。。。死より重き罰を。。。」

「七神官か、、、待ち伏せとはいい度胸だな、、
貴様らの崇める神のもとへでも逝きたいのか?」

そういいながらレヴンは剣を構えた、、、
ゾゾゾ〜肌を刺すような殺気があたりに満ちていく。

「戯言もその程度にしなさい! 我等が神の名において貴様を滅っする!」
七人の神官は足元からまばゆい光につつまれ、
レヴンを中心に包囲するようにワープした。

そしてうち二人がレヴンに後方から突っ込んでくる。

ほぼ同時にそれを感知したレヴンが振り向く。

グサッ・・・ 二つの大剣に二人の神官が突き刺されていた。

刀身から滴り落ちる液体は赤い血溜まりを作っていた。

「残り5人、、、逝きたい者から、、来い!」
二人から剣を抜こうとしたそのとき、貫かれた神官がレヴンの手をつかんだ。

「私たちは無駄死にはしませんよ、、、
貴方の動きを封じるため、わざと刺されたのですから…」

神官の口が血をたらしながら笑みを作ったとき、
レヴンの体を白くまばゆい光の帯ががんじがらめに縛る!

「クッ、くそがぁぁぁ!」
レヴンが怒声を上げて腕をあげようとするが、びくともうごかない。

レヴンを中心に5人の神官が手を掲げて魔法を暗唱すると、
レヴンの足元に巨大な魔方陣が生成されていくき、白い光がレヴンをつつみこんでいく!

「永遠なる時を彷徨い己の罪を懺悔しなさい! 禁呪─タイム・ホール!」

光が消えたとき、残っていたのは、
消えかけていく魔方陣と、二人の神官の遺体だけだった、、、。