I WISH ・・・9 〜異変〜



  闇が覆うルアスの森、そこに今、ひとつの光の塊が上空より落下する。



光が消えたとき、現れたもの。

それは生命体ではあることがわかるが、
それはマイソシアのどの生物にも属するものではないもの。

それは何対もの大きな爪牙をもち、それは怪しく光るいくつもの眼を持ち、
それは全体の半分をしめるだろう口をもつ。

そして無数の蛇のようにうねる触手をもち、四本の足を持つ。

大きさは家二軒分はあろうか…

その眼が、二匹の「エモノ」を捉えた。

「確かこの辺だよな〜、流れ星が落ちたの。」
光るオーブで足元を照らしながら、魔術師の男が辺りを見回している。

「ほんとにみたの〜?いきなりベットから飛び起きて子供みたいに叫ぶんだもん、
ほんと昔から変わらないわね、あなたは」
眠そうな顔をこすりながら、修道士とおもわれる女もそれに続く。

「本当だよ〜、持ち帰って家に飾ろう♪」 浮かれ顔で辺りを探す男。

「・・・漬物石にでもする気? またガラクタが増えるだけじゃないの。」
呆れる女修道士。

男が背にする森の木々の間から…悲劇は二人に襲い掛かる。

「そんなこというなよ。いつかは役に・・・ ぐあっ!!」

  ─グチャッ!

「ぇ? どうし・・・きゃあああああああああ!!」

そこには、頭から角を生やした男が浮いていた。否っ、ぶら下げられていた。

その背後から、うごめく「何者」かの気配を感じる。

怪しく光り輝く瞳がこちらをみている。


「何? なんのなのよぉぉぉ」 女は立ち上がり、我を忘れて逃げようとする。

が、「何者」より伸びてきた触手が、足を捕らえるほうがはやかった。

無数の触手にからみつかれ、宙へ上げられていく女修道士。

そのまま大きな口の中に放り込まれた・・・

─グチャッ、ボリボリ・・・

骨を砕かれ、血をすする身の毛がよだつような音が、夜の空気を振るわせた。

 モット、モットエモノヲ…

その生命体は、ゆっくりとルアスの町へと向かいだした。