My Way 長くて短い夜[前編]


「野宿とか・・・・・・初めてだよ・・・・・・」

木の枝を拾いながらつい、呟いてしまうあたし

「毛布とかはあるから安心しろ!」

カチン、カチンと火打ち石で火をつけながら言う淕

「はぃ」

「メシ何にするかな〜」

カバンの中を漁りながら、妙にゴキゲンなワン

「食べ物買ったの?」

「ナベも買ったぞ!」

自信満々のワン

・・・・・・。

ナベより宿代・・・・・・。

「露店で安かったんだって!!」

あわてながら言うワン

あたしの気持ちがわかったのかな・・・・・・?

「野宿も慣れとかねーと、ダンジョンの時とか困るぞ?」

火をつけ終わり、なべをかけ始める淕

「は〜い」

仕方ないとは、思うんだけどなぁ・・・・・・

集めた枝を1本ずつ、火の中へ放り込む

「夜の敵の方が強い・・・・・・でしょ?」

恐る恐る聞いてみる

「ん〜・・・・・・」

考えるワン

「そりゃ強いに決まってるだろ」

即答の淕

「え・・・・・・」

「流石にネクロとかは出てこないだろ」

スープを温めてる淕

「ネクロ?」

ワンから渡された毛布に包まり、首をかしげる

「ネクロケスタ、めったに出てこないが・・・・・・」

「出てきたら全滅」

パンとチーズをあたしに渡しながら言うワン

うぁぁぁ・・・・・・怖いよ〜

「出てきたらどうしよ・・・・・・」

「まぁ、大丈夫だろ」

温め終わったスープをあたしに渡しながら、淕は言う

「運命には逆らえないさ」

不吉なことを言うワン

「怖いってぇ・・・・・・」

温かいスープを飲みながら、つぶやく

やだよ〜・・・・・・

「考えるだけ、無駄」

パンをほおばりながら気楽に言うワン

「そうそう、人生なるようになるさ」

焚き火の様子を見ながら淕は言う

「はぃ・・・・・・」

つい、あたしは黙々とご飯を食べるだけになってしまった



だって怖いんだもん



ガチャガチャ

「難しい・・・・・・」

食後、まだ寝れないあたしは、ワンから貰った知恵の輪を解こうと必死に頑張っていた

「まぁ、焦るなって」

自分の剣の手入れをしながら微笑むワン

「ねぇねぇ、その剣って、露店とかでもめったに見ないよね〜」

ワンの剣を見ながら思ったことを言う

「これは親父から貰ったんだよ」

「パパさんから?」

「そうそう、パパなんて可愛らしい人じゃなかったけど」

「ふぅん・・・・・・、大切なんだね」

「モチロン」

そう答え、ニッコリ笑う

「知恵の輪より、スペルブック解読しろよ」

後ろらへんから、淕の声がする

「何処行ってたの〜?」

「ん、見回り」

そういうと、あたしの隣に座る

「お前がネクロネクロ言うからな・・・・・・」

「ありがと〜」

満面の微笑で答えるあたし

「現金な奴」

憎まれ口で答えてくれる淕

・・・・・・可愛くないな

「で、スペルブックは?」

「セルフヒールは、解読できたと思う・・・・・・」

「お」

2人の声が被る

「ワン、ちょっと剣貸して?」

「あぁ、重いぞ?」

ワンの剣で、指の先を切る

赤い線が走り、そこからプツプツ血が出てくる

「何してんだよ・・・・・・」

顔をしかめ、言う淕

目をつぶり、スペルブック通りに思い浮かべる

小さな光とともに、指の傷が消えてゆく・・・・・・

「お、成功か」

自分のことのように嬉しそうなワン

「よかったな」

頭をなでる淕

・・・・・・子供扱い?

「一応出来るんだけど、自分しか回復できないんだよね」

「うあー無意味―」

2人の声が被る

どうせ、あたしは戦いませんよっだ

「マイナーヒールはセルフヒールの応用だろ?頑張ればすぐできるさ」

あたしの血が付いた剣を拭くワン

「だな、すぐだろ」

淕は立ち上がり、拳を振るうまねをする

バチバチバチッ

「え!?」

淕の拳から、雷撃が起きる

「稲妻パンチ、本邦初公開」

「すご〜・・・・・・」

自信満々な淕に見とれるあたし

すごいなぁ・・・・・・

「すぐ、追いつくさ」

「うんっ」

早く、2人の力にならないと・・・・・・ね


夜も更けて、あたしは毛布に寝転がって寝ようと思ってた

見張りは2人がするらしい

妙な、胸騒ぎがする

何だろう?これは・・・・・・

「ねぇ、ワン、淕、起きてる?」

「アタリマエだろ」

「どした?」

2人の声

「胸騒ぎがする」

うつむいて、呟く

「・・・・・・?」

眉をひそめる2人

「何か、いつもと違うの」

「前は宿屋だったからな」

「そういうわけじゃなくて・・・・・・。何か」

何か、変なの

といおうとしたあたしの言葉をさえぎりる音が聞こえる


これから長くて短い夜が始まった


続く
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長かったので千切りました

次が後編です