My Way 戻るべき場所、仲間 「いやぁ〜、やっと女の子かぁ〜。むさ苦しいのがどうにかなりそうだなぁー」 鮮やかな緑色のローブを着た魔術師、流瑛 「今まで男3人、聖職者無しだったからなぁ・・・・・・」 オレンジ色のベストが印象的な盗賊、ハーグ 「仕方ないだろうが、女の子も聖職者も見つからなかったんだから」 オレンジの髪の毛の、戦士チェグラム 朝っぱらから訪ねたあたしに嫌な顔ひとつせずに、自己紹介をしてくれた 流瑛は綺麗な顔をしているが、考えられないほど素っ頓狂な声をしていて ハーグは何処か、黄昏た雰囲気を背負っていた チェグラムは女の子にやさしいフェミニスト 全然違う3人の仲に入ると、凄く新鮮に感じた 「初めてチェグラムのナンパが成功したよなぁ・・・・・・」 ふっと笑って呟くハーグ 「流瑛はしゃべらなかったらほとんど成功するんだけどなぁ」 「そんなに俺の声変?」 本人はあまり自覚していないようだった 「面白いよ?」 あたしもつい、言ってしまう 「魅悠ちゃんひどーい!」 元から高い声をさらに跳ね上げ、口もとにこぶしをあて、ぶりっ子ポーズを決める あたしはそれが可笑しくて可笑しくて けど、他の2人は冷たい目線で見てるだけだった 「キモい」 ハーグの一言が、流瑛のぶりっ子をさらに強力にさせていく 少し、暗かった気持ちがどうにかなりそうなぐらい、3人は明るかった 「今日からディグバンカー行くぞー」 スオミ森を歩きながらチェグラムが叫ぶ 「えー!虫が出るぅ」 口を尖らせ流瑛が言う 「でねぇよ」 流瑛の言葉に間髪いれずに毎回突っ込むハーグ ハーグが、黄昏たような雰囲気をまとっているのはこのせいかもしれない・・・・・・ 「魅悠は行ったことある?」 「龍討伐に、少しだけ」 あたしの一言に3人が凍る あごが外れそうなほど、口をあけたまま 「え?あたし変なこと言った???」 「龍・・・・・・ってハイランダーとか、デスペラートワードとか・・・・・・?」 目をパチパチさせて、チェグラムが聞いてくる 「ん、多分それだと思うよ?正式名称知らないし・・・・・・。あ、赤かったよ!」 龍を思い出すのはそう難しいことじゃない、会ったのは結構最近だから 「赤かった・・・・・・んですか・・・・・・」 ハーグが呆然とつぶやく 「あたしが戦ったわけじゃないんだよ? あたしと一緒に居た人とか、その師匠のパーティと一緒だったし?」 慌てて、弁解する 何で慌てたのかは分からないけど 「凄いパーティに居たんだなぁ、魅悠は」 「皆強かったよ」 あたしはにっこり笑って言う 皆、強かった あたしと違って何かを背負っていたから 皆、するべきことがあるから 「何でパーティが解散になったの?」 優しい口調で、流瑛が聞いてくる 「ん〜・・・・・・一人がカレワラまで人を送りに行って 一人が倒れて、一人がその倒れた人を介抱してて 一人は飛び出して、そしてあたしが余ったの」 笑った、つもりだった 笑えないけど 「そか、無理すんな」 流瑛に頭を叩かれた きっと顔は引きつっていて、笑えてなかったんだと思う それとも、もっと酷い顔をしていたのかな? 旅路は順調 モンスターに慣れたあたしはもう逃げなくなった 何時もは、淕があたしの近くに居て ユエがあたしの手を引いたりして庇ってくれていた 何だろう?何が違うんだろう? 皆優しくて良い人なのに 何が、変なんだろう? 「どうした?」 ふと、我に返る 「ん?何でも無いよ?」 最初に来たときとは違う、静かなディグバンカー 青い、モンスターたち 「元気無いじゃん?大丈夫?疲れた?」 流瑛に頭を撫でられる 何かが、違う 優しい、良い人、暖かい 何が足りない? 「珍しいな、他に人が居る」 チェグラムの言葉に皆が反応する 「ソロ・・・・・・はキツくないかぁ?此処」 一人で戦う、修道士 狼帽子に青い修道服・・・・・・ もしかして・・・・・・ かすかに見えた横顔は 間違いなく探していた人 「淕・・・・・・」 ほんの微かに、つぶやいたつもりだった 「・・・・・・探してた人? 魅悠を泣かした人?」 チェグラムの、声 流瑛とハーグは何も言わない、何も知らないから 「そんな奴のトコに戻るなよ。俺たちがいる」 斜め下を向いたチェグラムの表情は、あたしには分からなかった 流瑛とハーグが苦笑している あぁ、そうか 何でチェグラムがこんなにやさしいのか あたしを引き止めるのか 簡単なことじゃないか 何で分からなかったの? 分かりたくなかったから 気づかないフリをして、触れたくなかったから 全てが崩れそうで 「ごめん・・・・・・ね。 あたしの戻る場所、戻りたい場所 一緒に居たい人たちは、チェグラムたちじゃないみたい」 あたしは薄く笑う 笑えてなかったかもしれない 引きつっていたかもしれない けど、必死に笑った 涙は必要無いから 「・・・・・・そう、か。 なら追いかけてやれよ、ここで独りはキツいから」 顔を上げ、薄く笑うチェグラム 引きつっていた、ほほが少しだけ 目が、赤かった 「・・・・・・うん、ありがとう」 あたしは目をつぶって答える あの人の涙を見たくないから 「もしも・・・・・・傷ついたら、また戻ってきてくれ」 震えた声 「あたしが戻る場所はひとつだから」 そう、自分に言い聞かせるように呟いた 戻る場所は一つだけ 淕、ワン、ユエ、レイレンの待つ場所 その、一つだけ あたしは走った 未練は無い、もう大丈夫 ありがとう 目が熱くなってくる ヤバイ、泣きそうだ 「淕!!」 狼帽子に、青い修道服 見慣れた姿 「・・・・・・なんだよ、ほかの奴らと一緒じゃねぇのかよ」 不機嫌そうに、あたしの方を見ずに言う 「あたしの仲間は、淕たちだもん」 傷だらけの淕、いつものように回復をする 「・・・・・・仲間を見捨てた奴も、仲間なのか?」 「当たり前じゃない、関係無いわよ、淕は淕よ なんにそんなにこだわってるの?」 淕の手を引き、こっちを向かせる 叱られた子供のような、顔 酷く幼かった 「俺は早く強くならなくきゃ」 「どうして?」 「俺はサラセンで生まれた 俺だけ逃げたんだよ、親も兄弟も家族も、一族も、全員置いて ・・・・・・俺だけ逃げたんだよ!」 泣きそうになるのを堪えて、唇を噛んでいた 赤く、血が滲む 「何も・・・・・・出来なかった 親父やお袋が目の前で殺されるのを、ただ見ることしか出来なくて 家が焼かれるのを目の当たりにしても、何も出来なかった 親から渡されたゲートを使って、俺だけ逃げたんだよ・・・・・・」 目が熱くなる 今さっきから泣きそうだったのに、淕のこんな姿を見せられると 我慢なんか出来ない 頬を涙が伝う 痛みを持ってない人なんていないんだと、今更実感した 「何でお前が泣くんだよ」 照れ隠しなのか、声を荒げて言う 「淕の代わりに泣いてるんだよ みんなで強くなろう?独りなんか無理だよ みんな居るよ、戻ろう?」 淕の手を引いて、歩く 何も言わずについてくる淕が、とても小さく感じて不思議だった 「お疲れ様、みゆちゃん」 満面の微笑みで迎えたユエ 「ホント、馬鹿だよね、淕は どんだけみゆちゃんが困ってたなんて御構い無しでしょ!? だからあんたはモテないのよ」 これ見よがしにボロクソに言う 「うるせぇよ、レイレンはどーなんだよ」 「ん、少しは良くなってきたみたいだよ 慢性的な発作は続くだろうし、もうちょっと体力が戻るまで安静にしたほうがいいとは思うけど 馬鹿みたいに暴れない限り、発作は出てこないとは思うんだけどね」 手馴れた調子でご飯を作る姿は 一国のお姫様には見えない まるで主婦 「そうか 魅悠、スオミダンジョン行こうぜ」 と言って席を立ち、外に出ようとする 「ちょっとまって!今日ぐらい休ませてよ!」 「そうだよ!せっかくボクがご飯作ったんだから食べてよ!」 着々とご飯が並べられていく いい匂い、お腹が鳴りそう ぐぅぅぅ 「誰のお腹だ?」 あたしじゃない、ユエでもない、残りは・・・・・・? ユエの意地悪そうな声にキレかけながらテーブルに着く淕 「俺だよ!うるせぇな!腹減ってんだよ!!」 「逆ギレかよ」 笑い声が聞こえる、階段の方から 「レイレン!」 少しやせたのか、シャープな輪郭がさらにシャープになってるような気がした 「そんなにビビるなよ、歩くぐらい出来るぞ」 淕の隣に座る なんとなく、淕は気まずそうだ 「みゆちゃん、ちょっと手伝ってー」 キッチンから、声が聞こえた 「はーい」 そそくさと席を立ち、ユエの元へ向かう 「何すればいい?」 「いや、別に無いんだけどね 二人で話させたほうがいいかなって思って」 使ったばかりのフライパンを洗いながらユエがいたずらっ子のように呟く 「なるほど」 洗ったばかりの皿を布巾で拭きつつ、リビングを見る 「ごめんな」 レイレンが、何気なく呟く 「別に良い、仲間だろう?」 狼帽子を目深に被り、机に寝そべる淕は、照れてるように見えた
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