My Way 鎮魂歌『レクイエム』 後編 「流石・・・・・・強いな」 そう呟くワンの顔には、疲労の色が濃く出ていた 一睡もしていない、休む暇なんてない そのぐらい、敵は多かった だけど、詩人の力は凄かった 甘い歌声とともに、力がわいてくるような気がする 「詩人ってのは、特別な力が必要なんだよ。それなりに魔術に通じてなきゃいけないけれど それ以上の音感類は先天性なものが絡んでくるからね」 道を行きながら、レイレンが言っていた言葉 先天性的なもの・・・・・・か 魔術師や聖職者にもある程度必要だけれど、詩人には及ばないらしい 「キリが無ェな」 淕がイライラした口調で呟く 「ごっ、ごめんなさい・・・・・・」 ビクンッっと身体を震わせ、謝るなずな 「お前のせいじゃねぇよ」 ニヤッと笑って言う淕 どうにかいつもの淕に戻ったようだ 「どこら辺まで降りてるんだろうね」 飄々としたままのユエ 疲れてないのかな? 「スオミダンジョンは、かなり奥まであるからな。どのぐらいまで降りたことがある?」 レイレンがなずなに聞く 「ジョンキ、ジョカたちが居るあたりまで降りたコトがあります。 そのときはまだあたしは魔術師をしてたけど・・・・・・」 「お二人の職業は何なの?」 あたしはなずなに聞く 「修道士と、聖職者です・・・・・・2人とも強いから、多分大丈夫だと・・・・・・」 うつむいて言うなずな 「まぁ、急ごう」 ワンが少し、早く歩く その次を淕、あたし、なずな、レイレン、ユエ 敵はどんどん強くなる よく分からないような形をした敵が増えた レイレンが魔法生物と呼んでいる、物の形をした敵が多い 「もうすぐだな」 服掛けの形をした敵を殴りながら言う淕 「よく知ってるな」 ワンは感心したように言う 「・・・・・・まぁ、な」 複雑そうな顔をして言う淕 ダグァッ ドゴッ 炎の、弾ける音 「急ぐぞ、誰かが戦ってる!」 ワンが走る 「ちゃんとついて来いよ!!!」 淕も怒鳴り、走る 「急ごう?」 ユエも、あたしたちの前を行く あたしも、なずなも、レイレンも走る 「くっ」 ワンのうめき声 「ぅるぁぁっっ!」 淕の雄叫び あたしが見たものは・・・・・・ 機械生物の群れ 手に持つ箱から次々と炎弾を出していく その中心に・・・・・・人影 「散らすぞ!手伝えユエ!」 怒鳴る淕の声を聞き、全力疾走で走るユエ 流石!早いっ 「俺たちも急がなきゃな」 レイレンも、急ぐ あたしも出来るだけの早さでみんなの下へ行く なずなも、ついてくる ワンの身体が光に包まれる 「間に合った」 あたしは呟くと、淕、ユエにもヒールを使う 回復が追いつかない!? 無我夢中で、唱えるヒール 何がなんだか分からなくなる ワンは辛そうだが確実に1匹ずつ敵を倒す 淕は敵に囲まれながらも、着々と倒す ユエは盗賊の利点を生かしながら避け、急所に一撃ずつ入れる レイレンは範囲魔法を使わずに1体ずつに魔法を打ち込む なずなは甘い声で歌い続ける どんどん減っていく敵 減っていってると思う だけど・・・・・・ 敵が多すぎる 「クソッタレがぁぁぁっぁぁぁぁっぁっ!」 二度目の淕の雄叫び 傷だらけ、回復すら追いつかない 「イヤァァァァァァァァァァ!」 なずなが叫び声をあげる ワンがなずなのほうを見る へたり込むなずな 「いっ、嫌っ・・・・・・イヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 敵の数も減ってきて、囲まれていた人が見える 青い拳法着を着た男の人と、水色の法衣を来た女の人が、倒れている 「魅悠!二人を頼む!!」 ワンが叫び、敵へ突っ込む 淕もユエも、ワンに続き突っ込む 「俺たちはどーにかするから、2人を助けてやってくれ!」 「分かった!」 2人に駆け寄り、ヒールを唱える ・・・・・・ 回復が追いつかない!? なずなが駆け寄ってくる 「リィン!!ゼガぁぁぁっ!!」 2人の名前を呼び、泣き出す 「お・・・俺・・・よ・・・り・・・ぃ・・・を・・・・・・」 ゼガと呼ばれた修道士が途切れ途切れにしゃべる 「しゃべらないで!!!」 リィンと呼ばれた聖職者さんにヒールを唱える ・・・・・・もう、無理 あたしの力じゃどうにもならない リィンさんは何かしゃべろうと思い口を動かすが・・・・・・声にならない 「リィン!!リィンッッッ!!!」 なずなが泣きながら、リィンさんの手を握る 「ダメだよ!死んじゃ嫌っ!!せっかく詩人になったのに! まだどこも行ってないんだよ!?これからなのに・・・・・・」 胸を突くような、悲惨な叫び 何だろう、この胸の痛みは ほほを冷たい水が流れる 「ダメだよ・・・・・・まだ一緒に居てよ・・・・・・私まだ1人じゃ生きられないよ・・・・・・」 小さな声・・・・・・ 「・・・・・・もう無理だよ」 あたしたちからは目をそむけ、呟くユエ 「なっっ何で・・・・・・っ!そんなこと言うの!?」 キッっとユエをにらみつけいうなずな 「現実を見たほうがいい、キミは他力本願すぎるよ」 冷たく言うユエ 「ユエ・・・・・・」 ユエの手を引くレイレン そんなことをしてる間に、リィンさんとゼガさんはどんどん体温を失っていく 「やめてよ・・・・・・っ!なんでなの!?」 泣きながら叫び続けるなずな 倒し終わった淕とワンも、傍に来て黙っている ユエとレイレンは少し離れている 初めて、人の死を感じた ユエがこっちへ来る 「せめて、静かにしてあげなよ、キミの声はもう届いてない。安らかにいけるように・・・・・・」 そう呟くとひざを折り祈る 「・・・・・・」 しゃくりあげながらも、黙るなずな 残っていた体温も、付き、あたしの腕には冷たさが残る 「おやすみ」 ユエが呟き、うっすら開いていた2人の両目を閉じる 「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 届くはずもない、叫び声 取り乱すなずなを、ワンが落ち着かせる 「休ませてやろうか」 ぼーっとしているあたしの腕の中のリィンさんを、抱き上げ隅へ連れて行く 「ボクも手伝うよ」 ユエが淕の元へ駆け寄り、レイレンがゼガさんを抱き上げ淕の元へ行く あたしはその場から動けなかった あたしはどれだけ無力なんだろう? 誰も救うことが出来ずに、何が聖職者なんだろう? 「魅悠・・・・・・?」 なずなを泣き止ませたワンが声をかけてくる なずなは淕たちのところへ行ったようだ あたしはぼーっと、ワンのほうを向く 「・・・・・・思いつめるなよ・・・・・・?お前が悪いわけじゃない」 辛そうな顔をしていうワン 「・・・・・・あたしって、何なんだろうね・・・・・・何も出来ないよ」 「俺たちが着たときにはもう、手遅れだった」 「・・・・・・」 歌声が聞こえる 悲しく、泣き声のような・・・・・・か細い声 「向こうへ行こう」 ワンがあたしの手を引き、連れて行く 『この歌声があなたに届くのならば あなたに安らぎを あなたに平和を あなたに想いを この歌があなたに届くなら あたしに安らぎを あたしに平和を あたしに想いを 失っても、恋焦がれるこの胸に どうか安らぎと平和を与えたまえ 主よ、迷える全ての魂に安らぎを・・・・・・』 まるで魂を慰めるような まるで自分を慰めるような スオミダンジョンに、鎮魂歌が響いていた ------------------------------------------------------------------------- すいません、暗いです(汗 シリアスになっちゃった〜・・・・・・お気楽でいくつもりだったのに(汗 これで9話目です!!これからも頑張るので宜しくお願いします><
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