第一話〜始まり〜


赤道近くに存在すると言われている都市、マサイ。

そこでは、修道士達が自然の中で暮らしている。

しかし、そのマサイにも仮住居のような建物は存在していた。

その中で暮らしているのは、まだ自然の厳しさに耐えられないであろう子供達が大半であった。


「おじぃ、お話し、きかせて!」

幼い男の子が、『おじぃ』というあだ名の老人に近寄っていく。

「ほほぉ。お前さんか、よかろう話を――」

「お・・・・・・おじぃ。私も・・・・・・」

おじぃがそう言いかけた時に、かすかにそんな声が聞こえた。

おじぃが声のする方を向くと、女の子が立っていた。

年齢は、最初にやってきた男の子とほぼ同じくらいだった。

「お前さんもきくのか?」

おじぃの質問に、女の子は首を何度か縦に振って頷いた。

「そうか。では、話そう。昔むかしの修の歴史を・・・・・・」

おじぃは、とつとつと話を始めた・・・・・・。

マサイに伝わる神話・修として偉業を成し遂げた者の話などを、

ゆっくりと・・・・・・こどもにも分かるように、話して聞かせた。

そして、話が終わった。


「おじぃ、ありがとう。」「あ・・・・・・ありがとう。」

元気の良い男の子に、つられるように挨拶した女の子。

2人が、おじぃから離れようとした時だった。

「2人とも。」

おじぃに呼び止められて、2人はおじぃに振り返った。

「2人はいつか修道士にでもなる気かな?」

「おう!オレは絶対に強い修道士になるぜ!!おじぃよりもつよくなってやる!!」

そう訊かれて、元気に言う男の子。

それを見たおじぃは、「ほっほっほ。」と笑った。

「覚えておくがよい。

いつかどの職業につくことになったとしても、

決して・・・・・・命を粗末にしてはならんぞ。」

そう、おじぃは言った。