Will of Saga Z


あの戦いから二週間後。

混血の魔術師は、英雄としてルアスに帰ってきた。

「俺は何もしていない。ただ、ルケシオンの海賊がやってきたんだ。」

本人はそう語っているが、実際のところは定かではない。

ただ、一つ言える事。それは、我々は勝った!それだけは事実である!!

「と、新聞に書いてあるんだが・・・・・・実際のところはどうなんだ?」

親友のレオンがたずねる。

「ん?あぁ・・・・・・あれか。アレは、俺がやったんだよね。」

ヨハンは、「属性付与」のスペルブックを片手にそう言った

本当は断りたかったが、

「いいから持っていけ!!俺らからの気持ちだ!」

と、キャメル船長がそう言うので、断るに断りきれなかった。

「もともと船長達と約束していたからね・・・・・・

俺がウィザードゲートで、ルケシオン海賊団を呼ぶ事は。

おそらく、下級兵は聞かされていなかったから、驚いただけだろ。」

(ヨハンは何で、そうさらっと言い切れるのかねぇ・・・・・・俺も見習いたいものだな・・・・・・)

「さ、俺は次の雇い主を探してくるよ。」

「ん?ルアスを出るのか?」

「いいや、まだまだ居候させてもらうよ。」

(まだ居候するのかよ・・・・・・これじゃあな・・・・・・)

表情がにごるレオン

「じゃ、行ってくる…。」

ドアを開け、石畳の町に、ヨハンは飛び出していった。

「ったく、そろそろアイツも職を持ったほうがいいのにな・・・・・・。」

ラグナロック隊の隊長が、誰にとも無く、そう呟いた。

ルアスの町は、人の海だった。

薬屋では相変わらず冒険者達が回復薬を求めており、

町のおばさんたちは、噂話に花を咲かしていた。

(戦争があっても、ここの町の人は関係無しか・・・・・・)

ヨハンは広場に出た。

広場は、冒険者達がモンスターから得た戦利品を、露店をだして売りさばいていた。

(死人の持ち物をあさるような事をしやがって)

ヨハンは、露店の間を縫うようにして歩いていた。

「うおおおおおぉぉぉぉ!!!!」

雄叫びが聞こえてきた。

(ったく、ルアスの町治安はどうなっているんだ?)

そう思いながらも、雄叫びの方向に行ってみた。

野次馬達が渦を巻いていたが、それを押しのけて最前列に出る。

「ニナ・・・・・・」

ヨハンは唖然とした。

そこには41服を着ているニナが、ナイフ片手に戦っていた。

相手は、いつぞや俺が倒した戦士だった。

「きえぇぇぇ!!!」

戦士が奇声を上げながら、横一文字に剣を振る。

それをジャンプして回避した後、地面につく前に、戦士に強烈な「蹴り」が入る。

戦士の骨が悲鳴を上げた。

間髪入れずに、ニナは空中にいる間にもう一発蹴りを入れた。

だが、こちらは戦士によって回避される。

(ふーん、ニナは盗賊なんかやるより、修道士の方がよかったかもな。)

戦士はロングソードを両手持ちし、上段に構えた。

(盗賊相手に上段なんてな…アイツつくづく馬鹿だな)

ニナは好機!!と言わんばかりに、手にもっているナイフを投げる。

戦士は軽く体をよじり、回避した。

次の瞬間、ニナが飛び出した。

戦士は振り上げた剣をおろした。

ブオォォン

風を切り裂く音が聞こえた。

しかし、剣が斬ったのは、風だけだった。

やり損じた!と認識するよりも早く、戦士の喉元にはナイフが突きつけられていた。

ニナによって。

「さ、貴方の負けよ。」

野次馬達から拍手が起こる。

「ニナ・・・・・・お前、いつの間にそんなに強くなったんだ?」

野次馬の群れから、ニナは、自分が呼ばれたような気がした。

振り向いてみると、そこには「イカルスの英雄」が立っていた。

男は、ニナに向かって手を振っている。

だが、ニナはそれに気が付くと、顔を真っ赤にするや否や、

ヨハンの手を引いて、人通りの少ない道へ走り去った。

「ヨハン――さん。」

「ったく、戻ってきてまだ5日しかたっていないのに、早速41服支給されているとはな。」

「あ、いえ・・・・・・これもヨハンのおかげです。」

ニナは「さん」をつけずにヨハンを呼んだが、本人は気付いていないようだった。

「あのぉ・・・・・・いきなりで言いにくいのですが・・・・・・師匠になってもらえませんか?」

(ったく、驚く事は寿命を縮めるんだよな・・・・・・確か。)

「残念だけと出来ないな・・・・・・。」

ヨハンは、表情をこわばらせてそう言った。

「けれども、変わりといってはおかしいけれど――これ、ニナにあげるよ。」

ヨハンは腰に挿していた「ハプン」を、ニナに差し出した。

「えっと・・・・・・これって・・・・・・」

「いいから。魔術師の俺が使っても、本来の切れ味は出ないんだから。」

ニナはヨハンからハプンを受け取った

(暖かい…。)

ハプンは使い勝手が悪く、魔力を持たないのがほとんどであったが、

ヨハンのハプンは明らかに違っていた。

魔力を持っているのである・・・・・・

しかも、その量は、並大抵のものではなかった・・・・・・

このハプンの正体が明かされるには、後3ヶ月ほど待たなければならない。

「じゃ、俺は仕事探しにいくから。」

「ちょっと待って・・・・・・今日、ヨハンの家に言ってもいい?」

これも敬語を使わないで言ったのだが、ヨハンは気付いていない。

「ん?俺の家じゃないけど、別にかまわないよ。」

この一言によって、ギルバート家の出費がまた増える事となった・・・・・・。

ヨハンは、路地の角に消えて行った。

ニナは、その日一日中、とてもうれしそうな顔をしていたそうだ・・・・・・

余談だが、この二人の仲が進展するのは、さらに一年待たなければならなかった。

だが、次の戦乱は、たった三週間しか待ってはくれなかった。

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こんばんわ

やっと書けました…。

さっさと次の作品考えて書きたいと思います。

頑張るんで、応援よろしくお願いします。

あと…ニナですが…せつめいしていなかったです…。

 ニナ・ベルガー  ベルガー家の次女
          何故盗賊になったのかは不明
          父親のロイとは仲が悪いようだが
          ヨハンに好意を寄せている
          これでも一応21歳 

とまあ、こんな感じです。

でぁまた今度ノシ