リレー試作品小説 その4 「で、次の仕掛けってのは何なんだ? ハーレーはともかく、さっきの人、かなりキレてるぞ」 誰かさんと一緒で気の短い騎士だ。もはや呆れて何も突っ込む気がしないジャック。 「大丈夫だ。ピンチヒッターを呼んである」 ごそごそと次の準備に取りかかりながら言うシーザー。 「ただいま〜」 その時、絶妙なタイミングでルケシオンまで要塞復旧作業に行っていたシンシアが、 わざわざ呼び出しを受けてルアスに帰ってきた。 「よ、お疲れ様」 片手を上げてホースを片づけながら言うシーザーに、シンシアは大体の状況を察した。 一応確認はする。 「何やってんだい? 君は」 「要塞、直りそうか?」 「あれだけ見事に大破すればねぇ…なかなか。 で、わざわざ呼び出したって事は、私にも悪事の片棒を担がせる気って事でいいの?」 「今更だろ。散々一緒に色々やってきたんだ。呼んでやらない方が失礼かと思ってな」 苦笑しながら肩をすくめ、首を振るというなんとも器用な動作をとりながら、 シンシアは一通りの話を聞き、そういうことなら、と一つのビーカーサイズの瓶を取り出した。 瓶の中でショッキングピンクの液体が不気味に輝きながら揺れている。 「なんだ、それ?」 瓶に貼られた見覚えのあるマークに嫌な予感を覚えるジャック。 「レピオンホントのシマ博士の傑作品。 飲ませる薬じゃなくて、ぶっかけるだけで効果があるから、結構使えると思うよ。 まだ一度も試したことがないらしくて、誰かで実験してみてくれってさ」 「あの博士…相変わらずこんなものばっかりつくってんのか?」 何ヶ月か前に要塞で見た博士の顔を思いだし、ため息をつくシーザー。 「そんなこと言ってると、要塞もう乗せてもらえないよ?」 その時、気配に気付いたジャックが人差し指を口に当てた。 三人同時にインビジをかける。 「あのー。ホントに入るんですか?」 家の前で嫌そうな顔をしているハーレーくん17歳。蒼くんとお似合いといえないこともない。 「ったり前だッ! さっさと入るぞ」 そして入ってまた被害に遭うのか? ハーレーは思った。 「…悪循環している気がする」 「あぁ?」 「いえ、いいですよ。もうなんでも」 諦めながらハーレーはいつものように家の扉に手をかけた。 ―――と、入った瞬間スパイダーウェブをかけられるッ。 「な……ッ」 そして上からショッキングピンクの液体が降ってきて…。 むろん、よけられない…。 バシャッ。 二人は、気がつくと知らないところにいた。 「というわけで、あとは煮るも焼くもそちらに任せます。こちらは何もしてませんので」 にこにこと二人にぶっかけた薬品について語るシンシアに無言のギルド員達。 「随分と…えげつないものを使ったわね」 「褒められたと思っておきます」 「いやいや、ホントに褒めてるんだよ…ははは、最高だ」 笑いが止まらない紅。 例の薬品、その効果はサイズ縮小。つまり大人サイズの人間が手の平サイズに縮む薬…。 「ここ…どこでしょう?」 「知るか…」 当然と言えば当然だが、自分たちが縮んだことに気付いていない二人…。 シマの実験は今のところ成功のようだ。 「床…から言って家の中ですよね?」 「こんなにだだっ広くて何もない家があるか?」 会話しながら混乱している二人。とりあえず精神安定剤を飲んで冷静に考える。 「やっぱここは家の中だな」 「そうだと思います。ただ…」 「あ?」 「いえ、考えたくないんですけど…これって…その」 「んだよ、さっさと言えよ」 真っ青になっているハーレーの指さす先に、ドブネズミが三匹ほど、こちらを睨んでたっていた。 普段ならあっさり踏んで終わるネズミも、今のこの状況ではデムピアスよりも手強い。 慌てて走り始める二人。 「やっぱりネズミはちょっと大きかったんじゃないかい?」 「ゴキブリとかにしておいた方が良かったかな?」 「いや、たとえ縮んだとはいえゴキブリごときでは蒼の敵じゃないよ。やっぱりネズミで正解だと思うな」 「一応聖もいることだし、戦えないことはないだろ」 「蒼がんばれ〜」 楽しそうに笑いながら二人の様子をテーブルの上から応援する一同。 テーブル下では最悪がネズミに追い回されている。一生に一度、見れるか見れないかという最高の光景。 そして離れたところで、それぞれ床に足をつけないように気をつけながら椅子の上で話す三色盗賊。 「楽しんでもらえて何よりだね。わざわざルケから帰ってきたかいがあるってもんだよ」 「ギルドってのも結構楽しそうだな。おれらもやるか?」 「意味ないだろ。んなもん作ってどうするんだ」 実際、破壊者五人組は今更ギルドに看板を変える必要はない。
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