その1


後先なんて、どうでも良かった。



ただ、君を――――――






守りたかっただけなんだ。






「あの」

僕は、その声にはっと顔を上げた。

目の前には、聖職者と思われる女性が立っていた。

服装と武器からみて、相当なレベルだと解った。

「こんなところでぼーっとしてると危ないですよ。」

「装備から見てもう帰還は効きそうにありませんからね。」

その人は苦笑して、そう言った。


――――帰還。

ああ、そうか。

僕は――――――また、あの人のことを。

「では、気をつけてくださいね。」

そう言って、彼女はさらに森の奥へと走り去っていく。

僕はその背中に軽く頭を下げ、反対方向――ルアスへと、足を踏み出した。