第20話


それから、しばらくの時が流れた。

魔法で半壊したルアス街の復興も急ピッチで進み、

今となっては、マイソシア最大の都市へと再び地位を向上させられる程度には、

商業活動も人も戻っている。

そして

あの、マイソシア全てを巻き込んだ事件の傷も、だいぶ癒えてきた。

傷をほとんど負わなかったぼくを除き、入院を余儀なくされていたギルドメンバーも、

殆どが復帰している。

だけど

紅さんの死体は、発見されなかった。

あの後ルアス王宮は一度壊された。

でも、結局見つかったのは、謳華さんがつけていたイヤリングだけ。

誰も、そう多くは語らなかった。

騎士団は、“暴走機関”の残りのメンバーが、

運良く生きながらえたルートビエンを引退させ、代わりの団長を置いて何かしているらしい。

正直、もうあの連中とは関わりたくないというのが、全員の心の内だと思う。

暗いニュースだけではなく。

一応、明るい話題もあった。

あれから一週間ほどで、蒼さんとヘルさんが結婚した。

イカロスでの挙式にはかなりの人間が集まっていた。

中にいた、『ヘルギアさまファン後援会』とか書かれた鉢巻をつけた戦士を見て、

昔を思い出し、少し懐かしくなった。

ぼくは、不肖の弟子として、師匠の第二の人生を応援したい。

見た感じ二人とも、紅さんのことが忘れられないのだろう。

あんまり幸せそうな顔をしていなかったけれど。末永く、お幸せに。

『おや、ディカン君。僕と一緒に来るかね?』

そういう声が、たまに懐かしくなる。

情報に強く、細やかな気配りを忘れなかった聖職者、紅月読。

昨日の集会の時も、お茶を一人分多く出してしまった。

気づかれないように下げたつもりだったが、みんな妙にしんみりとしていた。

「師匠、これで本当に、終わりなんですか?」

「―ええ、もう大丈夫よ」

確かに。あの不穏な空気は消え去っている。

ぼくのヘマから始まった、一連の騒動。

ピリオドは、大切な一人のメンバーの死で打たれた。

代償は大きく、そして終わりを迎えた今。

もう一度、ぼくは自分に問いかけた。


本当に

ぼくの果たした役割は、

正しいものだったのだろうか。

必要なモノだったのだろうか?


もしかしたら

ぼくは物語の筋に


    必要のない存在では

    余計な存在では


なかっただろうか。


そんなことを考えても

仕方のないこととはいえ






気に、なった。