ディカンの観察日記(4日目)



 6:00 

さわやかな朝。

今日は天気もよく空気も澄んでいるような気がする。

目を覚ますと、朝日が昇りかけているルアス町。いい朝だ。


 7:50

ちょっと遅めの朝ごはんを食べる。

今日はディドを軽く調理し、スープに混ぜて飲んだ。

手っ取り早く、朝ごはんに必要な栄養を取ることができるので、ぼくはディドをけっこう食べている。

突如現れた蒼さんには変な顔をされてしまったが。


 8:32

毎日どっかのギルドが発行しているらしいルアス町の近況を読んでいると、板さんが現れた。

そだ、この人は普段何してるんだろと思い、ぼくは席を立ち上がった。


 9:00

板さんをつけて歩いていくと、

何でも屋のルエンが毎日行っている9:00からのタイムサービスにたどり着いた。

へー、安いや。

とりあえず、爆弾一セットください……。


 9:50

初めて気がついたかのように、板さんに振り向かれる。

どうやら放置プレイだったようだ。

なんとなく微妙な雰囲気を味わっていると、板さんはアジトで読書を開始した。

こちらに見える背表紙のタイトルからは……

え? なになに? 「魔法詠唱の際の、他者からの影響と実際」とかいう文字が。


 11:00

はっ、と目を覚ますと、相変わらず板さんは読書中。

長い銀色の髪に少し見とれていると、板さんはこちらに目を向けて、良く寝た? とか聞いてきた。

良く分からない顔をすると、手に持った錠剤を示す。

……へ?


 12:03

どうもぼくは、板さんの知り合いの魔術師さんの実験に使われたらしい。

どうやら今度は睡眠薬を研究中だとか。

えぇ? いいんですか、そんな危ないモノ見過ごして……。


 12:25

お腹がすいてきたような気がしたので、昼ごはんの用意を始める。

せっかく板さんがいるので、リクエストを聞いてみたら──ノカンフルコース?

それは……ぼくより隣のあの盗賊さんに頼んだほうがいいのでは……?


 13:15

まあ、できなくはないのでノカンフルコースを完成させて板さんの目の前に並べる。

すると、うわ、と言う顔。どうしたものかと思えば、冗談で言ったのにと返ってくる。

なんだか怒る前に精神的に疲れたので、黙ってぼくは食事を開始した。


 14:23

昼飯のときに使ったノカンの残骸を片付けていると、それは捨てないでくれと、板さん。

何に使うんですか、と聞けば、アレが使いたがってたからね、とのこと。

アレ? とか思いつつぼくはすでに命を失ったノカンと目が合って少しばかりぞっとする。


 16:00

気がつけばすでに陽はだいぶ傾いている。

早いなぁ・・・今日はと思うと板さんがおもむろに立ち上がった。

何処に行くかと思えば、いきなりウィザードゲートでどこかにとんでいく。

はぇ? ……ぼくにどうせい、と。


 16:32

仕方ないのでもう追跡をあきらめる。

アジトに帰ってふて寝すると板さんが帰ってきた。

何処行ってたんですかとか聞けば、今日は一日ダンジョンだったよ、とのこと。

…………え?


 17:00

むぎーーーー! 騙された! 騙されたッ。ひどい、ひでェ。

思わず蒼さん口調になりながら、内心でこう考える。

──なるほど、板さんが嫌いになる理由も分かる。

……妙な一日だった。