第七話



噂はその日のうちに各街に広まった。

最強のギルド─、連勝記録をまた更新。

「蒼、さすがだな。カリルの奴ともケリをつけたと聞いたが」

机の上には酒の入った瓶が山積みになっている。

すでにメンバーのほとんどが床に倒れ、残っているのは蒼と紅。

「まあな。所詮あいつとの相性も職業依存だったということだ。
それよりも意外だったのは、あの新入りだ」

「ディカン君か?」

「ああ。意外と使えた。

ただの頭でっかち馬鹿かとおもいきや、それをカバーできる程度には自分のやることを把握していてな。

うちのメンバーにはいないタイプだから、まあヘルギアの奴も喜ぶだろ」

「そうか」

蒼は窓から外を見た。

昇り始めた太陽が、ルアスの街を赤く照らしている。今日も新しい一日を迎える。

きっと、今日もそれなりな一日なのだろう。

「きゅ〜きゅ〜」

なぞの鳴き声が、静寂を突き破る。

「……ところで、この守護動物はどうしたんだ? 誰かわざわざ買ったのか?
うちに詩人はいなかったはずだけど」

「ああ、敵が城に入るときにドリル代わりに使って、そのまま捨てていってな。
どういうわけか新入りに懐いていたから、持って帰ってきた」

「それはそれは」

「しかもあいつ、守護動物だとは知らずに、餌としてカプリコ肉を置いておいたらしい。
なくなっていたから、食べたものだと思って喜んでいたが」

「はは。なるほど、実は誰かに取られてた、っておちか」

紅月読(あかいつき)─通称紅が、瓶に口をつけ、酒を一杯飲みほした。

「そうだな、じゃあ今度ディカン君を連れて、親睦を兼ねてどこかギルハンにでも行くか?」
「好きにしろ。そういう根回しは俺の仕事じゃない」

苦笑を浮かべ、蒼は立ち上がった。

正直、こうやって誰かと仲良くするのことも、悪くないハナシだ。

「ああ、こっちで企画しておこう」

「そうだな、なら久々に全員で行こうぜ。

ルケシオンのビーチに今いろいろとモンスターがいるらしい。

駆除もかねて、そっちにも行ってみないか?」

「分かった。考えておくよ」

それを機会(きっかけ)に、二人の間に再び沈黙が走る。

「なあ、紅」
「なんだ?」

「─お前の薦めたこの世界。なかなか結構、面白いな」
「ははは」

紅は椅子から立ち上がった。

「お前らしい、言い回しだ」